其の弍(喜八郎視点) ページ48
「恥ずかしい…」
僕達の部屋に入って一言目がそれだった。
「見たよね?うう、恥ずかしい…」
二言目もそれだった。この人はとにかく人前での羞恥にめっぽう弱いらしい。
「喜八郎、少し外すぞ。すぐ戻る」
「分かった」
「もう唇を擦るなよ」
唇……。
はぁ。まさか僕達の目の前で接吻するなんて。
次会ったらどうしてくれよう。スパイク付きの落とし穴に落として生き埋めかな?
足下への注意を逸らすために目線の高さに糸を張って、ダメ押しで糸にも毒を染み込ませて──…
そうこう考えているうちに滝が甕と桶を抱えて戻って来た。
「何それ?」
「酒だ、食堂から拝借してきた。これを口に含み、ゆすいで消毒する」
「口の中を酒で消毒!?そんなの聞いた事ないししなくて大丈夫だよ…!」
「厄除け、精神的浄化の意も込めております」
滝が満面の笑みであることが逆に恐ろしい。彼女も同じ事を感じたようだ。猪口に酒を注いで渡されると、躊躇しながらもそれを一気に流し込み、すぐに桶へ吐き出した。
「ぷわっ!?まっずぅ!」
「おや、Aさんは下戸なんですか?」
「下戸っていうか、私のいた時代では二十歳を過ぎないとお酒は飲んではいけないからね。二十歳以下は子供扱いだから」
「なるほど。しかしこれで口内は清められましたし、接吻も酒の味で上書きされましたね!!」
「うえ……口の中の空気がムワムワしてる…消毒用アルコールのスプレーを誤って顔の前で噴射してしまった時の感じ…このお酒めっちゃ強いんじゃない…!?」
「そこまで強いものではないですよ」
「まずい、苦い、喉がカーっとなる。酒臭い口を浄化させるのにまた別の何かを口に含みたいくらい」
「僕は酒と桶と猪口を片付けてくるよ。何か口直しになりそうなものがあったらくすねてきますね」
「頼みます!」
酒はそのまま戻して、猪口と桶は証拠隠滅のために洗って拭き上げて元の場所へ戻さないと。
夜闇の中の食堂は難易度が高い。割れ物が多いから気を付けないと。
(お、いいもの見っけ)
戸棚からはかりんとうを発見したので、バレないよう一本だけ頂いて、部屋へと戻った。
其の参(滝夜叉丸視点)→←四年い組の夜間護衛の段(喜八郎視点)
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時