其の漆(鹿之助視点) ページ45
「私も直前になって学園長先生に知らされたんですよ。山田先生は自ら逗留先として声をあげて下さったようなのですが、学園長先生は却下されたようで。どうしてですかね?」
山田先生でさえ却下?それは不可解だ。学園の先生なんて最も信頼のおける人である筈なのに。
まさか…Aさんと兵庫水軍を仲良くさせて、魚介を回してもらおうと画策しているとか!?あの学園長ならあり得る…。
まあこちらとしても、あの売れっ子で顔の良い山田利吉とAさんが仲を深める機会が生じなくて助かった。
「兵庫水軍の後は一年は組んとこの実家だもんなぁ。虎若が嬉しそうに語ってたよ」
「何…!?ちょっとAさん!部屋で詳しく教えてくれ!先に戻っていて!!」
背中を押して促すと、Aさんは五年生に礼を言って部屋へと戻っていった。
一方の私は、それはもう大急ぎで湯浴みを済ませたものだ。
「お待たせ!」
「わ、随分早かったですね。気を遣われたのでは?」
「いやいや、暑い時期の湯浴みなんてこんなものですよ」
本を開いていたAさんの近くに腰を下ろす。想い人と薄暗い部屋で二人きり。しかも寝巻きだ。これ以上動悸のする場面は果たしてあるだろうか?
「ええと…さっきの話だけど」
「夏休み中の逗留先ですよね?兵庫水軍の後は近江の加藤村、その後は紀州の佐武村にお世話になる予定なんです」
「それぞれ随分遠いな…。供は付けるのか?まさか一人旅ではないだろうな?」
「ありがたい事に馬借便で送って下さるそうで」
「馬借!?」
馬借の男と長距離を移動するだと〜〜!?
「ハァ、心配が尽きない……」
「大丈夫ですよ、加藤団蔵君のお父上が馬借の頭領をされていて、私を送って下さる清八さんは若い衆の中でも一番の腕前なんだそうです!」
若い衆っていうのが更に心配なんだけど!!
「…まあいい。せっかく二人でいるのに他の男の話ばかりではつまらない」
小松田君が運んできてくれたであろう布団を敷く。そしてその隣にAさんの布団を、と思い押し入れを開けるが、布団はこの一組しかないらしい。
……と、いうことは?
いやいやいやいやまさかAさんの気持ちも聞いていないのに同衾する訳にはいかないだろう!
それとも、これは我々を見てもどかしく思った学園長先生の粋なお取り計らい…!?
枕も一つしかないのだが、これは腕枕で正解なのだろうか!?
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時