其の肆(留三郎視点) ページ5
「左門君と三之助君が迷子にならないように、誰かが迷子縄持ってないといけないでしょ?」
「びっくりした…そういう事ですか。それなら、俺の同室の浦風藤内が代わりに見張っているから心配ご無用です」
三反田が包帯巻きを再開しながら言う。
「そっか!浦風君が一緒なら安心だね。食欲は?何か食べたいものとかある?」
「いや、そんな」
「遠慮しなくていいよ、お粥とかおじやとか、葛湯とか、食べたければ用意するよ」
作兵衛の手が布団から出て、Aの手に触れる。
「いいっす…Aさんに見舞って頂いただけで、すげぇ元気出ました」
「わ、手熱いね…。まだ寒い?」
「いや、暑くて暑くて」
「ダメだよ作兵衛、ちゃんとしっかり汗出さなきゃ」
布団を剥ごうとする作兵衛を三反田が制止する。
「……数馬君、ぽっと出の未来人のくせして本当におこがましいんだけど、布団を退けてあげた方がいいと思う」
「えっ、そうなんですか?」
「手足が熱くて寒気もしないなら、もう熱は上がりきっているからこれ以上暖かくする必要ないよ」
「……わかりました!」
Aの言う通りに布団を剥いでやると、作兵衛は気持ち良さそうに瞑目し、「涼しー…」と呟く。だがすかさずAが作兵衛の鎖骨の辺りに触れたので、びっくりして目を見開いてAを見る。
「汗でかなり湿ってる。数馬君、替えの寝巻きと褌ある?汗を拭き取ってから着替えさせた方がいいよ」
「ふっ、褌!?」
「大丈夫、私はもう退室するから。後は水を少しずつ頻回に飲んで、ビタミンC……うーん、今の時期だとトマト…トマトってこの時代にあるのか?
果物!果物を口にするといいと思う!あと柔らかく煮た芋とか!」
Aは所々俺達の知らない単語を発しながら三反田に助言する。
「柔らかい芋と果物ですね、分かりました!」
「数馬君、気を悪くしないでね!ごめんねほんと!作兵衛お大事にね!」
「じゃあ俺も行くわ。大きな修補の予定は入ってないから委員会のことは気にするなよ」
「ざす。お休みなさい」
後を追うように退室する。
作兵衛がAの手に触れたのは意外だった。いつの間に親しくなったんだろうか。
いや、風邪の時はもの寂しくて人肌恋しくなるし、そういう類なのかもな。作兵衛もまだ子供だからな。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時