鹿之助のお泊まりの段(仙蔵視点) ページ39
Aの部屋の灯りがいつまでたっても点かない。
たまたま自室でない所にいる可能性だってある。きり丸のアルバイトの手伝いに行ったのなら、そのまま奴らの部屋で今日の労働の成果などを話しているのかもしれない。
しかし、どうも胸騒ぎがする。
ひとまず入門票を確認に行けば学園に帰ったかどうかの確認はできる。そう思い立って長屋を出たところで、同じ方向へ向かう喜八郎とかち合う。
「立花先輩、思案顔でどうされたんですか」
「伝七達がAを門外に出すのが怖いと言っていたのがどうも気になる…。
帰って来たか小松田さんのところへ確認に行って来ようと思ってな」
「実は僕も…。一緒に行きます」
門の前で入門票を手にそわそわしている小松田さんの姿が、焦燥感を駆り立てる。
「小松田さん、どうしたんですか?」
「ああ、立花君に綾部君…。実はね、アルバイトに出たきり丸君達がまだ帰って来てなくて。
日が長くなったとはいえ、もう遅い時間だから、そろそろ山田先生と土井先生にお伝えしようかと思って…」
「立花先輩…!」
「まずい事になったかもしれんぞ。
小松田さん、私達は町まで探しに行きます!」
「ええっ、ちょっ、君達!?」
出門票に殴り書きをして門を出ると、ちょうど地平線の辺りにA達の姿が小さく目に入る。
そして男の影が一つ余分にある。
ああ良かったと安堵する小松田さんを尻目に、私達はAの元へと駆けた。
「立花先輩と綾部先輩だ!」
「お前達、遅かったじゃないか。心配したぞ。それに──」
「どうしてデモシカさんと一緒に帰って来たんですか?」
私と喜八郎の視線を受け、真剣な顔をしたデモシカさんが口を開く。
「学園長先生にお話がある」
「まさかAさんを娶るって話じゃないですよね?」
デモシカさんは表情を崩さず、また前を向いて歩みを再開する。
「それより遥かに悪い報せだ」
一応、嫌われている自覚はあるらしい。
◆
学園長先生の庵へは同伴させてもらった。
Aはあまり私達と目を合わせようとはしなかった。何だか負い目を感じて静かになっているようだ。
「おお!出茂鹿之助じゃないか。こんな時分にどうした?」
「学園長先生に至急、お伝えしたき儀がございまして。
私が町での労働中、Aさんがスッポンタケ忍者の一人に連れ去られそうになっておりました」
「な、なんじゃと!?」
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時