その男、再びの段 ページ35
「お、お客さんっ!」
脇目も振らず走ったお陰で、気になる話をしてくれたお客さんの元へ辿り着けた。
「花屋のお嬢さん…!」
「Aって言うんです、私の名前…」
「ッ! それじゃあやっぱり君は!!!」
「いえ…私は遠い所から来たので、恐らく偶然が重なっただけだと思うんですけど…。
ただ、ついこの間も似たようなことがありまして。それでお聞きしたいんですけど、妹さんのお名前って…?」
「妹は伝といいます」
お伝さん!
彼女は私のことを旧友の面を被った物の怪と言った団子屋の看板娘。
「…そのAさんに最後に会ったのは五歳の時なんですよね?さすがに五歳児と私の顔が似ているというのは無理がありませんか?」
「……そっくりなんです、Aの母君に。幼いAが消えてから心労がたたってやつれていますけど、面影があるんです。
お願いします。彼らに一目会うだけでも!たとえ別人だったとしても、父君も母君も喜びます」
「ぬか喜びさせるだけでは…?私は伊賀の出身で…」
「それはきっと記憶が混乱しているだけだ!あの娘達も本当の妹ではないのでしょう?さあ、あなたの実家に帰りましょう!」
何か紐解く一歩になるかもしれない。それに、私はもしかして五歳の時に
現に父母や友人の記憶は一切ないのだ。
「帰りが遅いとあの子達が心配するので、一目だけ…」
差し出された手を握ろうとした瞬間、後ろから私の手首が掴まれた。
「Aさん、この人誰ですか!?」
「ら、乱子…!」
乱太郎君は厳しい表情でじっと男性を見ている。
「怪しい者ではないよ。行方不明だったAを見つけたので、お家に案内するところだよ」
「だったら、日を改めてくれませんか?私達今、花売りで忙しいんです」
「生き別れたご両親に、一刻でも早く合わせてやりたいんだ。
これは黙っていたけれど、母君が病で臥せっているんだ。Aに会えたら、きっと生きる気力を取り戻すに違いない」
どうしよう…早く行ってあげたいけど、乱太郎君の手首を掴む力は増すばかりだ。
「ねえ、私は一人で帰れるから。少しだけ行ってきてもいいかな…?」
「ダメです絶対!知らない人に一人でついていっちゃダメなんです!!」
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時