アルバイトのお手伝いの段 ページ32
しんべヱ君は歩くとすぐ疲れるしお腹が空くようで、途中の茶店やらうどん屋やらで休憩したいと駄々をこねた。それを見てきり丸君がぷりぷりと怒る。
「しんべヱ、そんな事している暇は無いんだぞ!」
「ねえきり丸君、アルバイトってどんな事するの?」
「町で花を売る仕事です!遅くなればなるほど売れにくくなっちゃうので!!」
「なるほど。ごめんね、私の身支度が遅かったから…。しんべヱ君、早く終わらせたら食べに来れるかもしれないから、それまで頑張ろう?」
「ううっ、はい…」
私達は花を栽培する農家で四人分の背負い籠いっぱいに花を預かった。
町に着くまでに、この時代の花の用途を聞いてみた。
「墓や仏壇に供えたり、地蔵に供えたり、水害で死んだ人の供養には水に投げるし、崖から落ちて死んだ人の供養には崖から落とすし、」
「ちょっときりちゃん、お供え以外の用途もちゃんと説明して差し上げてよ!」
「ウチでは床の間に飾っていますよぉ!」
「お金持ちはたくさん買って床の間に飾ります。庶民は竹の一輪挿しに生けたり、想い人に贈ったりします」
「そっか、案外令和と変わらないんだなぁ」
「令和って?」
「私がいた時代の元号だよ」
「へー、変わった呼び名」
「出典は万葉集の【初春の令月にして
「名前くらいは知ってますけど、私達から見てもだいぶ昔の歌集ですよね?」
「そうだよ。令和から数えたら千三百年くらい前の歌集だよ」
「それがそんな未来まで伝わってるなんて、なんか浪漫を感じるなぁ〜…」
「本当、そうだよね!そうそう、忍者として名を後世に残しているもいるんだよ」
「影に生きる忍者の名前が伝わってるんですか!?」
「うん。だから君達も努力すれば、未来の教科書に載るかもよ!」
乱太郎君はえへぇ〜と顔をニヤつかせて有名になる自分を想像しているようだ。
「町に着いたぞ。二人とも、これからは女として振る舞うんだ。乱太郎は乱子、しんべヱはしん子、俺はきり子だからよろしく!」
「疑問だったんだけど、女装する必要ってあるの?」
「もちろん!花は女が売った方が売れるんす!」
呉座を敷いて花を並べ終えると、きり丸君改めきり子は百合の花を一輪持って、すう、と大きく息を吸った。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時