【忍たま】君の想いは花筏【共通話５】 (ページ25)

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其の参（三郎視点）ページ25

「三郎知らない？」
「いえ、知りませんね」

放課後、私を見ていないかと探し回るAを見つけて思わず身を潜めた。

「三郎は？」
「や、今日は見てないけど」

「三郎を見てない？」
「鉢屋が怖いのだろう？わざわざ捜さんでいいだろう」

そのうち諦めるだろうと思っていたのだが、Aはもう四半刻もこうして人に訊ねたりキョロキョロと辺りを見回して歩き回っている。

「小松田さん、出門票見せて頂いてもいいですか？」

「ふぇ？構わないですけど」

「確認ですけど、鉢屋三郎は出て行っていませんか」

「鉢屋君は今日は出掛けていないよ」

「ありがとうございます」

私を捜して人通りのほとんどない場所まで進んでゆく。普段使わない倉庫の裏まで確認する姿に居た堪れなくなり、Aの前に姿を現そうと木から降りると同時に、Aも姿を消す。

よく見るとAのいた場所に穴が開いている。

(ま、まさか落とし穴を踏み抜いた…！？)

変な汗が背を伝う。Aを失ったかもと焦る気持ちと、七松先輩はこういう気持ちだったのかと冷静に働く思考で支配される。

駆け寄って穴を覗くと、Aは穴底にいて、腰をさすっていた。

「痛たた…」

「A！！！」

「……三郎？」

「掴まれ！！」

腕を精一杯伸ばすと、一瞬戸惑いながらも私の手を取る。

「ハァ、ありがとうさぶろ──」

言い終わる前に掻き抱いた。

「お前が時間移動しなくて良かった…っ！」

「…三郎……、泣いてる？」

「すまない…私は臆病で大馬鹿者なんだ…。本当の自分を晒すのに抵抗があって、お前にも心にもない事を言ったりした。
お前を求めるほど、傷付けることになってしまった…」

「じゃあ、本当に私のこと嫌ってる訳じゃないってこと？」

「ああ。誓って嫌っていない。むしろAの事を……」

急に冷静さを取り戻した私の頭は言葉を紡ぐのを躊躇った。

「……いや、今はこれ以上言うのはやめておく」

私から離れたAは、手拭いを私の目元にそっと押し当てた。

「ごめんなさい。私が大人気ないことをしたばかりに泣かせてしまって」

「違う！私が最初に傷付けた！不甲斐ない私を殴ってくれ」

「……それじゃあ、遠慮なく！」

思わず目を瞑ると、鼻をギュッと摘まれた。

「いって…」

「これでおあいこ！仲直りしよう、三郎」

「…ああ！ありがとう！」