【忍たま】君の想いは花筏【共通話５】 (ページ24)

今日:13 hit、昨日:61 hit、合計:27,665 hit

其の弍（三郎視点）ページ24

昼休みに立花先輩に呼ばれた私は、驚きの言葉を耳にする。

「今日の夜間の護衛当番だが、お前達はやらなくていい。竹谷と斉藤に回す」

「え、何故ですか？」

「Aがお前の事を怖がっている。昨日怒らせてしまったから今日何されるか分からんと、伊作と留三郎の所に相談に来た」

「何もする訳ないじゃないですか」

「しかしお前と会った後に鎖骨に吸い痕を付けてきたとくのたまから報告が上がっているし、他に何か知らないかと五年を詰問したらAに無断で指を舐めたとか。事実か？」

「…それは、事実ですが」

「弁明があれば私が聞こう」

私は言うか悩みながらも、訳を話すことにした。

「Aがくのたまと結託して私に恥をかかせたので、私もAに恥ずかしい事をしようと報復のつもりでした。
昨日は両手を汚したAが久々知兵助に懐の手拭いを取って欲しいと頼んだので、兵助の手が変な所に触れるよりはと思い、みたらしを舐め取りました」

「……ハァ、お前は下級生か」

「私は正直、懐をまさぐられるのは良くて、指を舐められるのは良くないという違いが分かりません」

「お前はこの四年と少々、何を学んできたのだ？Aが嫌がっているのは指を舐められた事や痕を付けられた事ではない。お前自身だ」

「わ、私自身が…！？」

「お前が照れ隠しの為にAの小袖姿を『馬子にも衣装』と言ったのは五年から聞いている。その前にも黄色の小袖について散々似合わないと言った事について、A本人の耳に入った事も聞いた。
言わばAを怒車の術に掛けた状態だ。お前が夜間護衛の任を免れたかったのなら大成功だが、そうでないのなら大馬鹿者だな」

「…………」

返す言葉がなかった。

「不破雷蔵には長次が伝えている。それじゃあな」

私は本当の私を隠したい臆病者だ。
素顔だって忍術学園の誰にも晒したことはない。
本心も、照れ臭いと感じたら婉曲させて言葉に乗せた。

Aの事となると婉曲どころか、反する言葉になることも多かった。
馬子にも衣装なんて思ってはいなかった。本当は凄く似合っていて、でも素直に褒めるなんて私の柄じゃないから、そういう言葉が飛び出した。

だからAの事を好意的に思えば思う程、Aは離れていった。
彼女は私とは反対に素直な子だから、私の言葉をそのままに受け止めていたから。

手がかりはたくさん落ちていたのに、こんな簡単なことに気付けなかった。否、気付こうとしなかった。