其の弍(兵助視点) ページ21
「そんなのダメだよ…もしそうだったなら、何とかして元の持ち主に身体を返さなきゃ」
「そんな思考を持っている物の怪が、人を乗っ取れるとは俺は思えないなぁ」
「合理的に考えるなら、Aは物の怪なんかではないと思うよ」
「…二人とも、ありがとう」
顔を歪め、大粒の涙を流し始めた。
「あーあー、俺達泣かせちゃったなあ」
「責任もって泣き止ませないとね」
しゃくり上げるAを布団に寝かせて、赤子をあやすように肩をトントンと叩いてあげる。
「ねえ勘右衛門、俺女の子を泣き止ませた経験なんてないから分かんないんだけど、これでいいのかな?」
「あはは、あんまり序盤から寝かせる人はいないかもなぁ。まあ良いんじゃない?
ちょっと俺外すからその間兵助よろしく」
「え?うん、早く帰って来てよ」
勘右衛門、何を考えているんだろう?厠かな?
「兵助、ごめんね、面倒臭い女で…」
「何言ってるんだ、こんな出来事があったなら心細くなってしまうのは当然だよ。面倒だと思っているなら俺から話を振ったりしないよ」
「うん…」
「自分が何者か分からなくて怖いかい?」
「うん…」
「何度でも言うよ。俺と勘右衛門はAの味方だからな」
Aはこくりと頷き、目を覆っていた手を退ける。
「私、兵助に会えて良かった」
「俺もAに会えて良かったよ。後で勘右衛門にも言ってあげて」
そこでちょうど勘右衛門が帰って来た。
「お、この短時間でさっきより落ち着いてる!やるなあ兵助!」
「どこ行ってたんだい?」
「ちょっと水場にね。ほい!」
濡れた手拭いをAの顔に被せる。
「目が腫れちゃったら可哀想だから。これで目元冷やしてな」
「さすが勘右衛門だなぁ…手慣れてる」
「ちょっと兵助?俺が女たらしみたいな言い方!」
「あはは、冗談だよ!」
「ふふ…」
「あ、Aが笑った!」
「勘ちゃん、会えて良かった。ありがとう」
「えー聞いた!?俺に会えて良かっただってさ!!」
「うん。俺もさっき言われた」
「あ〜〜そんな気はしてた!でも勘ちゃんは嬉しいぞぉ〜〜!!」
勘右衛門はAに頬擦りした。
「勘右衛門だけずるいぞ…!」
俺も反対の頬に頬擦りした。
「
「ぷっ…確かに」
Aの涙もすっかり止まって、俺達はAが寝つくまで他愛もない話を続けた。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時