五年い組の夜間護衛の段(兵助視点) ページ20
「やあA、さっきぶり」
「布団敷いておいたよ〜!」
勘右衛門がぽすぽすと布団を叩くと、Aは眉根を寄せた。
「何で三人で寝るのに布団は二枚なの…!?」
「いやあ、なんかいいでしょ、仲良しみたいで」
「いや意味分からん」
使われずに畳んである布団を端に敷き、そこに横になった。
「分かった分かった!布団は三枚敷こう!だけどAが真ん中で!」
ぴったりと隙間なく敷かれた三枚の布団を見て、ハァと溜息を一つ漏らす。
「まあ昨晩の事を思えば大分いいか!」
「昨晩の事?」
「伊作君が敷布団に薬こぼしちゃって、布団二枚に三人寝たの」
「なんだ、既に経験済みだったんだ。狭かった?」
「狭かった!朝起きたら鼻が触れそうな距離に伊作君の顔面があって、慌てて反対側に寝返り打ったら留三郎の顔面があって。心臓止まるかと思った!」
「そりゃあ先輩方が羨ましいなあ〜」
俺は勘右衛門から聞いた話をするために、居住まいを正した。
「A、昼間の団子屋での件、勘右衛門に聞いたよ」
「…そっかぁ」
「勘右衛門が、Aが気にしてるんじゃないかって言って教えてくれたんだ」
「やだなぁ、別に物の怪だって言われても傷付かないよ?」
眉を下げて笑う。無理して笑う君の顔は好きじゃないな。
「本心がそうなら良いんだけどさ、俺だったら知らない人に急に妖術がどうとか、物の怪だとかって言われたら嫌だなって」
「…うん、まあ、いい気分ではないけど。
でもね、お伝さんが言ってた事を全否定できないんだよ。だって名前と歳と、未来の学舎に通っていた事くらいしか思い出せないの。親兄弟や友人の事は存在があったのかどうかも分からないくらい。
だから私は本当に物の怪で、Aという子の身体を乗っ取っているんじゃないかと…」
「でもさ、Aはこの学園の穴に現れた時、未来の装束を身につけていたじゃないか。それは勘右衛門を含め、何人もの忍たまや先生が目撃してる。未来からやってきた何よりの証拠で、その時既にこの姿だったんだから、団子屋の娘の主張は当て嵌まらない」
「そうだよ。それに万が一、君がAという女子の皮を被った物の怪だとしても、突き放したりなんかしない。中身をひっくるめて君を受け入れるよ」
俺と勘右衛門はそれぞれ頭と背中をさすった。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時