其の伍 ページ13
「あれは女物の髪紐だから、俺に合わせちゃダメよ?」
「ごめんなさい…女装をする事がバレちゃダメなんだね」
「プッ…あはははっ!そらそうでしょ、人の目を欺く為の変装術なんだから!逆に何でバレてもいいと思ったの?」
「いやあ、ついうっかり何も考えず」
涙が出るほど面白かったのか、目尻を人差し指で拭う。
「さ、小間物屋はまだあるから、そっち行こう!」
勘ちゃんはまたにっかり笑って、私の右手を引っ張ってゆく。
「いい?俺が意見を求めたら、俺に似合うかどうかは置いておいて、直感で答えて。それから、小物は俺に贈られる体でいてね。恋人のフリよろしく!」
「了解!」
「ん!いいお返事」
二軒目のお店は露店ではなくきちんとした建物のお店。品質や値段は少々高いようだ。
「わあ、どれも素敵だねぇ」
「ほんと、一つに絞れないなあ〜」
勘ちゃんは右手に簪、左手に髪紐を持って、視線は色とりどりの帯売場に向かっている。
どうでもいい情報だがこの時代の帯は【平ぐけ帯】と言って、令和の着物の帯と比較するとめちゃめちゃ細いし、身体の前で結ぶのでとてもやりやすくて助かっている。
不器用な私が幅広長尺の帯の時代に飛ばされなくて良かったとつくづく思う。
「ほらほら、お前のを選んでるんだから、もっと真剣に見ろって!俺ばっか悩んだってしょうがないだろ」
「ああ、うん、そうだね」
店主に不審に思われないように、自分だったらどれを贈られたら嬉しいかという目線で商品を見て、時々手に取ってみる。
「ん、それが気になるのか?」
髪紐を持って見ていると、二人の肩がぶつかるくらい勘ちゃんが身体を寄せる。
「!」
「どしたの?」
「ううん!この髪紐綺麗だよねえ〜」
「白で今と変わり映えしないけど、よく見ると銀糸が一緒に編まれていて、光に翳すとキラキラして綺麗だなぁ!」
勘ちゃんの肩、ゴツゴツしていた。
目も丸いし、束になってる髪も毛先が丸く見えるし、顔も丸い方だからびっくりした。
よく見たら手の甲も筋張っているし、袷から見える鎖骨もくっきり浮き出ていて、首の筋がスッと通って…あれ?勘ちゃんってこんな男らしかったんだ。
「おじさん!これ下さい!」
「毎度ありがとうね!少しまけとくよ」
「わ、ありがとうございます!」
私のものを買ってくれた体だから、恋人らしくお礼言わないと。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時