其の弍 ページ1
「迷惑とかではないんですけど、あんまり山田先生に言われると思わず突っぱねたくなると言いますか…」
両手の掌で山田先生の視線を受け止め、苦笑しながらあさっての方向を向いていると、ふっと山田先生からの圧がなくなった。不思議に思っていると、なんとも愉しげに笑い始めたのだ。
「……情緒大丈夫ですか?」
「はっはっは!いや、
おお!これで地味に気を遣っていた囲い込みがなくなる!
しかし、やけにあっさりと引いたなぁ。押してダメなら引いてみろって?ま、何にせよ一つしがらみが無くなったようで嬉しい。
「あっそうだ、利吉さんから小袖を仕立てて頂いたんですが、奥様が私に贈るようおっしゃられたとかで。遅くなりましたがありがとうございます」
「ああ、知っているとも。紺と藍の片身替りの小袖だろう。よく似合っているじゃないか。いい仕立てだな」
はて?どうして知っているんだろう。
町から学園まで、利吉さんに肩を抱かれて帰って来た。その後は誰にも会わずに自室へ戻ったのだが。
「……他に何かご覧になりました?」
「いいや?利吉がAの肩を抱いて小松田君を赤面させるくらい密着していた以外の事は私ゃ知りませんよ?」
んぎゃー!お父上に盗み見されてたあああ!
「そういうこと、私や利吉くん以外とはしていないだろうね?婚前の女子が簡単に接触を許してはいけないからね!」
「半助、お前の件は知らんぞ!?どこでどういう経緯で何をしたんだ!?」
「鬼ごっこ大会の時、用具倉庫で身を潜める時に密着したんです…って私の事はどうでも良くて!A!答えなさい!」
「どうでも良くはないなあ!?まさか手は出していないだろうな!?」
「出す訳ないでしょ!?親子して全く同じ質問しないで下さいよ!
それでA、どうなんだ!?噂によれば出茂鹿之助くんにも求婚されたとか聞いたけど!何もしていないよね!?」
「あ!吉野先生のお手伝いの途中だったんだったー!失礼します!!!」
忍とは、逃げるが勝ちである。
(忍じゃないけど)
「あっ!?こら待ちなさい!!」
その後、始業の鐘に救われて無事に事務室まで逃げおおせたが、吉野先生は息切れする私を見て、気の毒そうな顔をして呟いた。
「好かれ過ぎるのも考えものですねえ…」
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時