其の陸（八左ヱ門視点） ページ22
結局どんな知り合いなのかは聞けなかった。
“楽しい一日になりそう”という一言から撮影を通して接触してくるかもしれない。変なちょっかい出されるようなことがあれば俺が守ってやらないと！
撮影クルーと一緒に薬学部研究棟にある実験室へ向かう。あの金髪もクルーの一員なのだろう。荷物でパンパンのトートバッグを肩に提げて最後尾をついてくる。
実験室に到着すると、カメラマンが三脚を立てたりレフ板を用意したりする間、やはりアイツがやって来て、櫛を俺の前髪に通した。どうやらこの男はヘアメイクらしい。
「どうも、失礼するね。……うーん、想像はしていたけど凄いクセと硬さだねぇ」
「そう言うなら放っておいて下さい」
「あはは。僕も契約頂いてここに居るからそういう訳にもいかないんだよねぇ。ちょっといじるからそこ座ってくれる？」
男が俺の髪に手早くスタイリング剤を付けて頷いた。
「──うん、こんな感じかな。何とかなって良かった」
人の前髪を何とかなってなかったみたいに言うな。確かに頓着してないけどさ。
「じゃあ次はAちゃん」
実験室の椅子に座らせると、恍惚の表情で髪を撫でた。
「立花君には及ばないけどこの手触り、手にしっくり来るコシ、艶……はぁ、Aちゃんのバージンヘア最高だよ…」
うっとりしながら櫛を通している。言い方がいちいちやらしいな。
「いいよねぇ、彼氏さんは毎日この髪に触れられて」
俺の方を見て言う。彼氏じゃないし毎日どころか触れた事すらないのだが。
「竹谷先輩は彼氏じゃないよ」
「そうなの？他に恋人は？」
「居ないよ」
「ふうん。じゃあ僕が立候補してもいいよね？僕の名刺、連絡先書いておくから」
(はあ！？)
恋人が居ない事に安堵したのも束の間、金髪男はAちゃんの耳元で囁くと、名刺に何か書き込んでAちゃんの白衣の胸ポケットに差し込んだ。Aちゃんは驚いて肩を跳ねさせた。
これはさすがに看過できない。はっきり言ってやらないと。
「それはセクハラじゃありません？」
「身体には触れてないけどダメだった？ごめんね彼氏くん…じゃないか、先輩くん」
こいつ、わざと煽ってきてやがるな！？
「大事な後輩なので、彼女の許可なくそういう事しないで下さい」
「ふうん。すると君は肩を抱き寄せるのを許可されているの？」
「え…あ」
Aちゃんの肩をガッチリ抱き寄せていたのを男に指摘されて気がついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - ゆずぎょうざさん» 拙作で泣いて頂きありがとうございます！竹谷ルートはシリアス多めでしたね、、ご心配をお掛けしました😂潮江ルートの方もどうぞ宜しくお願いいたします🙇✨ (4月21日 8時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぎょうざ - 完結お疲れ様です！とても感動して泣いちゃいました！途中シリアスで最後までハラハラしていましたがハッピーエンドで良かったです😭潮江ルートを今から読みます！これからも頑張ってください🙇 (4月21日 7時) (レス) id: 03a920b2e2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» 応援ありがとうございます！竹谷ルート楽しんで頂けて良かったです✨潮江ルートも読んで頂けるとのことなのでより一層頑張りますね！ (4月19日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 竹谷ルート完結お疲れ様でした！ 本編に続き竹谷ルートのお話も素敵ですごく魅力されました！次の潮江ルートも楽しみに読ませて頂きますね、これからも応援しています！ (4月19日 7時) (レス) id: 08d8a5b782 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» ありがとうございます！不安にさせてしまいすみませんでした🙇シリアス書くの楽しかったのでまた不安にさせてしまうかもしれませんが次作も宜しくお願いいたします！ (4月8日 20時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年3月28日 9時
