其の陸 ページ40
「はい！お待ちしていますね！」
「おお、そうじゃ。これを野村雄三に渡してはくれんか？」
大木さんは私に小さな壺を手渡した。それは全体が茶色くて真ん中辺りに黒い釉薬が垂れたような柄をした、“食品を入れておく壺といえばこれ！”というような見た目をしていた。
「これを野村先生にお渡しすればいいのですね、承りました！」
「ああ、頼んだぞー！」
それを注意深く手拭いで包むと、大木さんとケロちゃんに別れを言って帰路につく。ケロちゃんともっと触れ合いたかったなあ…。
「そういえば乱太郎君、ケロちゃんに何か食べられたの？」
「え！？えっと……はい！宿題のプリントを！」
「それは大変！後で土井先生の所へ行こう！私を手伝ってくれてたから山羊に食べられてしまったってきちんと説明しないと！」
「いえいえ！！大丈夫ですよ！！課題内容覚えてますから別紙に書きますし！！
そ、それより壺の中身は何なんですかねえ！？」
壺に鼻を近づけるとツンと発酵臭が香った。
「匂いからして漬物かなあ？」
「ああ……じゃあやはりアレですね。野村先生お気の毒に」
「どうしてお気の毒？」
「それを野村先生にお渡ししてみれば分かりますよ〜！」
「取り乱すお姿が目に浮かぶねえ」
漬物に目がないくらい好物ってこと？あのいつもすました野村先生が漬物を前に破顔するのだろうか？
「ふふふ、お渡しするのが楽しみだなー！」
私は忍術学園の門をくぐる直前、手伝ってくれたは組の三人にお礼を言った。
「今日は本当にありがとう！皆にささやかなお礼をする為にイナゴ料理を作るのに、そのイナゴ取りでまたお世話になって本末転倒だね」
「僕達はそうは思いません。少なくとも楽しかったです。何だか見ていて飽きないというか、目が離せないというか。竹谷先輩が視線で追っていた気持ちが分かったような気がします！」
「三治郎君、それって私が危なっかしいってこと！？」
「あはは！まあ否定は出来ませんね。飛んできたイナゴを避けられなかっただけで尻餅をつくくらい鈍臭いですしね！」
十歳に酷評を受ける私、十六歳です。この時代では大人です。
門をくぐると、彼らとはすぐに解散した。イナゴが入った袋と私が八左ヱ門などに同時に見つかるとサプライズにならないからだ。因みにイナゴはは組で責任を持って預かってくれるらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
