其の漆 ページ14
「竹谷の考えは分かった。Aはどう思う？」
「長次！！」
伊作君が諌めるように長次さんの名を呼んだ。長次さんは悪びれることもなく、じっと私を見つめている。何の感情も乗せていない長次さんの視線が怖くなった。
話を振られたので何か発言しなければならない。参ったな……八左ヱ門の話の後で帰りたくないなんてとてもじゃないけど言いづらいじゃないか。
私は帰りたくないんだから、皆にそう言わなきゃいけない。けど、言ってどうなる？私が帰らないと決めたって、八左ヱ門のベクトルはもうこちらへは向かない。そんな気がしてならない。
「私は……、帰」
「無理に言わなくていい！自分の人生に関わる事だ、すぐに答えなんて出さなくていい！こればかりは雷蔵を見習って五年でも十年でも迷いながら此処で生きろ！！な？」
三郎が私の肩へ手を回し胸へと抱き寄せ、もう一方の手で私の口を覆った。私が雰囲気に流されて口走らないようにだろう。
酷い混乱と不安のあまり、その三郎の力強い腕に甘えてしまおうか、という邪な考えが過った。
だけど、私が間違いを犯す前に八左ヱ門が三郎の腕の中から私を引き剥がした。
「俺の前で何の真似だ、三郎」
「お前っ…“何の真似だ”だと！？よくもそんないけしゃあしゃあと！！散々Aを傷付けておいて、今更恋仲ぶるな！！」
「現時点で俺はAの恋仲なのだから、道理に反しているのはお前の方だろう」
八左ヱ門は私を未来へ帰したいのに恋仲で居たいの？それってどういう感情なの？
「昨日の雷蔵の悩みよう、得心がいった。雷蔵はきっとAが自主的に帰ると言い出す僅かな可能性を恐れていたんだろうが、まさかお前が帰れと言うとはな八左ヱ門！！！見損なったぞ！！！
こんなAの為のようで苦しめるだけの会合なぞ終わりだ！！行くぞA」
私を立たせるように腕を引いた。それに対してまた八左ヱ門が阻止しようと手を伸ばすので、私はそれを制した。そして三郎にも同じように動きを制した。
「待って三郎。私話せる。大丈夫だから」
一つ、思い出したことがある。いつも他人や生物達を優先して自分の事は後回しな八左ヱ門と恋仲になる時に心の中で誓ったことだ。
今こそ、これを実行する時じゃないか。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
