其の弐(利吉視点) ページ7
「……利吉さん、まだ私のこと嫁にと思っていらっしゃるのかな……」
ええ!思っていますとも!
いいね、Aさん本音がだだ漏れだね!
「ハァ。どうしてこんな仕事もできて顔も良い人が私なんかを……」
小さく呟いて、私の前髪をそっと横へ流した。僥倖……!
私はAさんの本音の賛辞を内心で歓喜しながら心に納めた。これは私、絶対に脈ありだよね。
Aさんと共に生きてゆく人生の妄想が一挙に押し寄せる。
が、すぐに次の呟きによりそれは瓦解することとなる。
「北石さんの方がお似合いなのに」
「え」
思わず声を上げてしまった。
「……え!?やだ、起きてたんですか!?」
「はい、すみません。
それより、Aさんは私と北石君が一緒になればいいと思っているんですか?」
「……はい、思ってますが…」
「どうしてですか?」
「北石さんは私とは違い、自立していらっしゃいます。しかも利吉さんとは同じ忍びで、お仕事で組まれることもあるとか。でしたら息は合うのかなと想像できますし、気心も知れているでしょうし、町で会った時はお二人は親しげでしたし」
「まあ、確かにこの世界、同業と結婚する人も多いけど。何かと楽だからね。でもそれだけで決めたくはない」
この人の元へ帰って来たいと思わせてくれるような人と、血の通った結婚がしたい。仲の良い両親の影響か、それは子供の頃から思っていた。
「私の父も母も忍びですけど、二人の結婚で上手くいっているのは同業だからではなく、互いに愛し合っているからだと思うんです」
「そ、そうですか……。膝枕のままで真剣なお話されてもあんまり内容入って来ないのですが、一旦どいて頂いてもよろしいですか?」
自分から膝に誘ったのに。起きたら途端に照れ屋発動だもんなあ。
「嫌だと言ったら?」
「利吉さんは優しいので嫌なんて言いませんよね?」
お、Aさんにしては珍しい切り返し。
「どうでしょうね?私はこう見えて結構意地悪なところもあるんですよね」
不敵な笑みを浮かべてAさんの背骨をツツ、となぞると背中を大きく反らして反抗的な視線を寄越して来た。
「私だって、従順で大人しいだけの女じゃありませんよ」
「へえ?」
Aさんは、先程私が金輪際やらないでと言った例の色仕掛けを私にやって見せてきた。
「利吉さんと密着していると暑くて堪らないんですけど……?」
あのAさんが私を煽ってきている…!?
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時