其の弐 ページ33
「あはは、作兵衛なら本当に五百年待ってくれそう!
でも相当長いよ?五百年は」
「左門と三之助の魂でも探しながら待ちますよ、そん時は。あいつらきっと浄土への道が分からず浮世を彷徨ってるでしょうから」
眼前にぶっきらぼうに小指を差し出す。そんな簡単に約束していいのかな、と迷っていたら私の手を取って勝手に小指を絡めた。
「……ほんと、そういうところ男前だね」
指切りげんまんをした後、不意に目頭が熱くなって伊作君の膝を濡らした。
「情緒が不安定だね……心が疲れてる証拠だよ。大丈夫、この二日間色々あったせいだよ。落ち着いて」
優しく頭を撫でてもらい、否応なく訪れる眠気に抗いきれず、瞼を閉じた。
どうか、これが幸せな夢の終わりじゃありませんようにと願いながら。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
私は身体を揺さぶられて目を覚ました。
「もうじきに忍術学園に着くよ」
柔らかい声が降ってきて、飛び起きた。辺りを見回すと、なまこ壁が目に飛び込む。
「ふふ、そんなに慌ててどうかした?…おわっ!」
柔和な顔で微笑みかける伊作君に抱きついた。
「室町だぁ…良かった…まだ皆と一緒にいられるんだぁ…!」
「なんだ、眠る前のこと気にしてたんだ?きっと僕らはまだまだ一緒にいられるよ」
「……うぅ、うわぁぁん」
それから私は堰を切ったように、子供みたいに声を上げて泣いた。
「Aさんどうしたんだろう?」
「寝起きでぐずってるみたい」
「そうじゃないだろ、赤ん坊じゃないんだから」
「きっと皆無事で帰って来られたから嬉し泣きだね」
そんな声が聞こえてもお構いなしに。
正門がギイ、と開いて、忍たま達はワアワアと騒ぎながら門を潜ってゆく。
「ハァ〜さすがに疲れたな。風呂だ風呂!」
小平太が肩を回して言う。
「その前に片付けだ」
すぐさま仙蔵が小平太の首根っこを捕まえる。
「えー、私結構疲れたんだけど、明日じゃダメ?」
「今晩雨が降ってみろ、火薬が湿気って使い物にならなくなるぞ」
「そりゃ仙蔵と田村の死活問題だな!やるか!」
疲れたと言う割にまだまだ元気そうな小平太が火薬甕を四つ抱えて煙硝蔵へと走って運び込む。
「おい、丁寧に運べよ!落としたら承知せんぞ!」
「分かった分かった!」
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時