これからも、室町での段 ページ32
しほーろっぽーはっぽー しゅーりけん
しほーろっぽーはっぽー やーぶれ
前方を歩く一年生達が賑々しく歌っている。
不思議な歌だけど、これが彼らなりの
荷車の心地よい揺れ、仲間だと自他共に認められた心の充足感。辺りを見渡せば微笑みを返してくれる忍たま達。まるで幸せな夢の中にいるかのようだ。
「怖いくらい幸せだなぁ」
「幸せなのはいいことだよ。怖がらないで」
手が側頭部に回り、私の身体はゆっくりと伊作君の方へと倒され、膝枕の体勢になった。
「疲れたでしょ?僕の膝の上でお眠り」
「私、子供じゃない…それどころか忍たまの誰よりも歳上なんだけどっ」
「別に子供扱いしてる訳じゃないよ。ただ、Aちゃんはこの二日間で誰よりも疲れただろうから」
「結構寝たし、戦が始まったら後方に退避させられて何もしてないよ?」
「肉体だけじゃなく精神的にもね。初めての戦だし、色んな奴に想いを告げられてたでしょ。寝ると記憶と思考が整理されるから、寝ておきなよ」
「でも」
これは神様が見せてくれた喜劇だとしたら、今が終幕だ。
「大丈夫、忍術学園に近付いたら起こしてあげるから」
「…うん。じゃあ眠くなるまでこのまま喋る」
「はいはい、どうぞ」
ふと目の前の作兵衛と目が合った。しかし彼は恥ずかしそうにそっぽを向く。私は作兵衛の頭に向かって手を伸ばした。
「な、何ですか!」
上体を逸らされてその手は頭に届くことはなかった。
「さっき、作兵衛の頭を撫で損ねたから。悔いは残したくなくてさぁ」
「はあ?悔い?何ですかそれ……」
訝しげに私を見る。
「戻りたくないけど、いつ戻されるか分からないでしょ、元の時代に。だからさ、触らせてよぉ〜」
やだ、セクハラするおじさんみたいな言い方になっちゃった。
「はは、いいじゃないか富松。撫でさせてやりなよ」
伊作君の援護射撃も虚しく、作兵衛はツンとそっぽを向いた。
「いいえ、尚更触らせません!俺の頭を撫でる為にこの時代に齧り付いて下さい。……もし望まずして戻ってしまっても、五百年後まで成仏せずに化けて出てやりますから」
責任感のある彼のことだ、一度言ったことをそう簡単に反故にするとは思えない。作兵衛なら本当に化けて出てくれそうな気がしてならない。
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時