其の弐 ページ31
留三郎が突然、私の肩に鍛え抜かれた腕を置いたのでぐんと重くなった。
「そうだな、俺達仲間だもんなぁ?」
「留三郎…」
すると反対側にも文次郎君の腕が置かれて、臼砲を引いた筋肉痛の残る身体は悲鳴を上げそうだった。
「バカタレ、もっと堂々と言わんか!」
「文次郎君…!」
でも、その重みがこの上なく嬉しい。胸の内が熱くなって、顔が緩むのが止められない。私は留三郎と文次郎君の背中に手を回して抱き寄せた。
「ふふっ……仲間って認めてくれるんだね」
「はあ!?認めるも何も、俺達はずっと仲間だったろうが?」
「……そうだね、皆は仲間として接してくれたのに、根底ではずっと未来人であることを気にして、居候であることに引け目を感じて否定してきたのは私の方だった。
私、もう未来人であることを忘れて、この時代のAとして生きていきたい。そう願ってもいいのかな……?」
「当然だろう?今から未来という言葉は禁止な!」
「そうだな。忍たまが未来という単語を出す度にAを背負って校庭十周とかどうだ?」
「それわざと言う奴が出てくるぞ。小平太辺り」
「ハッ、確かにな」
私が回していた手を放すと、二人は野良犬の頭でも撫でるようにわしわしと髪をかき混ぜる。
「わ!?髪はダメ──」
すると二人の腕がタカ丸君によりがっしりと掴まれた。
「髪は女の命って言うでしょ?命をぞんざいに扱っていいの?」
どこか影のある笑顔に二人の顔が引き攣って手を引っ込めた。
タカ丸君は手早く私の髪を直してくれたけど、どことなく嬉しそう。どうしたんだろう?
「さっきは悪かったよ、佐吉に無理を強いたこと。確かに俺と留三郎の勝負に周りの人間を巻き込むべきじゃないよな。
斉藤、代わってやってくれ。三郎次、疲れたら伊助と佐吉と交代しながら運んでくれ」
「「「はいっ!」」」
佐吉君と伊助君、三郎次君が元気よく返事をした時、先生が休憩終わりの号令を出した。私達の話がまとまるのを待っていて下さったのかもしれない。
「A」
荷車に乗る前に兵助が小声で私を呼び止めた。
「お陰で三郎次まで気に掛けて貰えたし、助かったよ。ありがとう」
「気にしないでよ。仲間でしょ!」
「俺はそれ以上だと思ってるよ」
“そうだな!”みたいな言葉が帰ってくると思っていたら思わぬ男前カウンターを食らった。
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時