其の弐(タカ丸視点) ページ29
「ち、違う違う!!……曲がりなりにも口付けした仲だし、お仕置きっていうならとんでもない事されそうって思って…」
フフ、とんでもない事って。Aちゃんの中の僕ってどんな印象なんだろう?
そりゃあもちろん頬に口付け以上の事はしたいけど、ここは殆ど外で、周りの男達はAちゃんのことが大好きな奴らばかり。乱れた姿は見せたくないからね。
「外ではお預け。でも、この程度だとAちゃんはもう動揺しないんだね」
「いやいやいや、十分恥ずかしいです!!」
「なんか落ち込んじゃうなあ。他の男に慣らされてるなんて」
「ねえ違うよ!?タカ丸君のお仕置きが想定より優しかったからだよ!?」
「じゃあ、お仕置きの続きはまた後日ね?今度誰かに髪を結わせたら──その晩は寝かせないから」
耳に唇を這わせて、吐息混じりの掠れた声で言えば、Aちゃんはビクビクと肩を震わせて、恥ずかしさに唇を引き結んでいる。
そうそう、その反応が見たかったんだよね。でもこれ以上は僕も色々と我慢が出来なくなっちゃうからお預けかな。
「……あのさ…どうしてそんなに私の髪が他の人に結われるのが嫌なの?たとえ誰かが結ったとしても、タカ丸君に会った時に結い直してくれたらそれで良いんじゃない?」
「そういう問題じゃないんだよね。極力髪に触れて欲しくないんだ。でもこれは僕が髪結いだからじゃない」
「だったらなぜ?」
理由を訊ねられ、それまで片膝をついてしゃがんでいた僕は居住まいを正した。
「齢十六の君の髪を、僕が
僕の真面目な様子にAちゃんも正座をして聞いていたけれど、申し訳なさそうに眉を八の字に下げた。
「凄く真剣に言ってくれたのにごめんね……ビンソギって何?」
「……そっか。Aちゃんの生まれ育った時代ではもう鬢削ぎの文化は衰退したんだね。じゃあ然るべき時までどういう意味か伏せておこうかな」
君が鬢削ぎを知らないなら、それは君にとって過去の髪型であるに違いない。万が一未来に帰ることになった時、時代遅れの古臭い髪型では可哀想だから今はできないね。
君にその意味を伝えるのは、未来へは帰らないと強く決心したその時だよ。
「さ、そろそろ出発の頃合いだから行こう」
Aちゃんから何か聞きたげな視線を感じながら、彼女の手を取って荒屋を出た。
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時