君の髪は特別の段 ページ28
私、どうして利吉さんの袖を掴んだりなんかしたんだろう?
何だか少し寂しさに似た気分。“次の休み”って、具体的にいつなのか妙に気になる。という事は、私は利吉さんに興味がある……?
「君のことが異性として気になるからだよ」
って、何でここで土井先生から言われた言葉を思い出すんだ私!
ちゃんと心身ともに休息を取ろうと頭をぶんぶんと振って利吉さんと土井先生を思考から追い出した。
遠くの山の稜線をぼんやりと眺めていると、タカ丸君が隣に来て私の手を取った。
「Aちゃん、今いいかな?」
「えっ?いいけど」
足早に荒屋の屋内へ進んでゆく彼に小走りでついて行くと、ある一室に入る。行きの休憩時に作兵衛と訪れた部屋だなぁ、なんて思いながらタカ丸君に視線を戻す。
「僕が何を言いたいか分かる?」
「え…?何だろ。何かあった?」
「忘れてるみたいだから教えてあげるね。僕、他の男に君の髪を触られるのが嫌なんだけど」
「えっ!?どうして知ってるの!?」
髪を結い直して貰ったことが露呈していたことに驚いて、思わず自分の髷を掴む。
「これは僕や父にしか分からないと思うけど、結い方には人それぞれの癖が出るんだ。それはAちゃんの癖じゃない」
「へーっ、結い方で分かるなんて凄いね!」
「はぐらかさないで。誰にさせたのか言ってご覧?」
いつも通りの穏やかな顔をしているけど、その瞳はどこか負の感情を孕んでいるように見えた。一歩、また一歩と近付く度に後退りしていると、書院造りの板間の
「あ痛たた……伊作君だよ。ボサボサになっちゃって、鏡がないから代わりにやってあげるねって」
「ふうん、それで善法寺君に結わせちゃったんだ。Aちゃんにはお仕置きしないとね?」
「え──」
一体何をされるのかと身構えると、右の頬にタカ丸君の少し湿った唇がそっと押し当てられた。控えめにちゅ、と音を鳴らしてゆっくりと離れていく時に、タカ丸君の熱い吐息が湿った頬にかかり、それが時間をかけて冷えていった。
もちろん恥ずかしい。しかしタカ丸君の言う“お仕置き”がまさか頬に口付けだけで終わるとは思わず、拍子抜けした。
「──あれ、反応薄いね。物足りなかった?それともご褒美になっちゃった?」
123人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時