利吉の我慢の段 ページ27
行く道中で休憩に利用した荒屋の連絡所には、タソガレドキ本陣へ向かっていた喜三太君救出組の皆、そして喜三太君が待ち構えていた。
「皆ぁ〜〜!!」
「喜三太ぁぁ!!」
「聞いたよ、僕のために率先して色々動いてくれたって。ありがとう!!」
「そんなの!僕達友達でしょ?」
一年は組の皆、全員揃って嬉しそうだ。
あの場に私の入る余地はないから、また後で無事で再会できたことを喜三太君と喜ぼう。
「Aさん」
皆の視線が喜三太君達に向かう中、背後から私を呼ぶのは利吉さんだ。
「私は依頼主に報告に行かねばなりませんのでここでお別れです。一言挨拶をと思いまして」
「そうですか…。やはりお忙しいのですね。お願いですからきちんとお休みも取って下さいね」
「うん…他ならぬAさんの頼みとあらば、少し仕事量を調整する必要がありますね。Aさんに会いに行く時間を捻出する為にも」
「だったら来られる度に私の部屋で仮眠を取って貰いますね。それなら利吉さんの目的も果たせるし休息も取れますし一石二鳥!」
利吉さんは一拍考えてからずい、と顔を寄せた。
「それ、期待して良いんですよね?共寝しに行きますよ?」
「いえ、全く言葉通りの意味ですから昼間お越しくださいね」
「Aさんに会いに行って昼寝するのは勿体無い気もしますが、まあでもAさんの寝具を借りられるのは非常に魅力的ですね!前向きに検討します」
……利吉さんのお昼寝専用寝具が必要かな。
「それじゃあ、名残惜しいですがまた」
「…あ、待っ、」
急に別れる素振りを見せられて、もっと話したくなってしまって思わず袖を掴んで制止してしまった。
「わ…!すみません、お忙しいのに」
「いえいえ。どうしましたか?」
「全然大したことではないんです。もう少しお話ししたいな、と思っただけで」
「………。嬉しいです。さっき園田村では“十分話した”と言われたのに。ようやく私に興味が出てきましたか?」
「……分かりません、ただ私も話したいなと思っただけで。つまらないことで引き留めてすみません。お仕事頑張ってください」
「今はそれで十分です。次の休みにはそちらへ寄りますから、たくさん話しましょう。それまで我慢出来ますか?」
「が、我慢って…!」
「──なんて、我慢するのは私の方なんですけどね。それじゃあ、本当に行きますね」
一陣の風が吹いて、利吉さんはたちどころに居なくなってしまった。
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時