【忍たま】君の想いは花筏【共通話11】

其の伍（伊作視点） ページ25

「よっと……作兵衛、ちょっとどいてくれるか？」


僕はお堂から留三郎に背負われ、火薬の甕を載せた荷車に腰掛けるAちゃんの隣に下ろされた。


「ありがとう留三郎。Aちゃん、隣いいかい？」


「うん、もちろん！」


「守一郎と富松もすまないけどよろしくね」


「あ、ハイ…」


「伊作先輩もこの荷車に乗っていかれるんですね、知りませんでした」


「僕もさっき留三郎に突然言われて。松葉杖で帰るつもりだったからびっくりしたよ」


「食満先輩、ジャンケンに負けた腹いせだ」


「ジャンケンって？」


「いえ何も」


Aちゃんと後輩の楽しい時間を邪魔しちゃったかな？何となく留三郎に連れて来られた理由が分かった気がするよ。ごめんよ後輩達。

それはさて置き、Aちゃんの髪がボサボサになっているんだけど何があったんだろう？


「ねえAちゃん。髪が乱れてるけど、もしかして利吉さんと──」


「何もない！！！」


ふうん、何もなかったのか。食い気味で答えるところが逆に怪しいけどね？


「そう、それなら良いんだけど。あっち向いてくれる？良ければ僕が結い直してあげるよ」


僕が返事を待たずに髪紐の蝶結びを解くと、Aちゃんは「あっ」と声を上げて髪紐を押さえた。


「ごめん、髪を他の人に結わせると怒られるかもしれないから自分でやるね」


「ふうん…それって斉藤タカ丸？」


「うん。髪を下ろす姿を僕以外に見せないでって言われてて。どうしてだろうね？」


そう言って自分で結い始めるので髪紐を取り上げた。


「自分でやるにも鏡がないと難しいだろう？大丈夫、斉藤はこの場には居ないから。君達も他言したりしないよね？？」


真顔を向けてやれば守一郎と富松は首を縦に振った。久々知の方を見ると、その隣の文次郎とも目が合った。


「伊作！！女の髪紐を解くなんぞけしからん！！自分でやると言っているんだからやらせておけ！！」


あー、面倒なのに目をつけられちゃったなぁ。自分だって昨日それ以上のことをしたっていうのに、棚に上げちゃってさ。


「ただ髪を結い直しているだけじゃないか。年頃の女の子なのにボサボサのままなのも綺麗に結えないのも可哀想だろ？それにお前だって昨日、Aちゃんに胸を貸して慰めてたんだろう？」


「だああああ公衆の面前で言うなバカタレェ！！！俺は既に猛省した！！！故に忍術学園に着いたら算盤を持って走り込みすると決めている！！！」

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