其の肆 ページ24
「実は、手潟さんが家にあった色々な書物を僕達図書委員会に全部譲ってくれたんすよ、タダで!!」
目を銭の形にしてアヒャアヒャと笑いながら角ばった風呂敷包みを私に見せた。嬉しそうに上下に揺すっている。どうやらその書物の重さすら愛おしいようだ。
図書委員の皆はきり丸君のように四角になった風呂敷包みを荷物として持っているが、雷蔵だけは背負子に葉っぱをたくさん詰めていた。
「雷蔵だけ書物じゃないんだね」
「うん。園田村特産の痛み止めに使われる植物だって。僕自身砲弾で頭を打ってこの痛み止めに助けられたし、保健委員にもお世話になったから恩返しのつもりでね」
それじゃあまた後で、と雷蔵ときり丸君は前の方へと行ってしまった。
列が整ってきて、もうそろそろ出立が近いのだと悟った。短い間だったけど、園田村は自然が多くていい所だったな。戦いに来たのでなければもっと風景に目を向けることができたのにな。
「Aさん、あちこち見回して誰か探しているんですか?」
守一郎が問う。
「ううん。この村の景色を目に焼き付けてるの。綺麗だと思わない?戦の爪痕はあちこちついてしまったけれど、皆でこの村を護れて良かったよね!」
すると、守一郎はとても柔らかく微笑んだ。
「本当ですね!!」
そのくしゃっとした笑顔がとても可愛くて、守一郎がちょうどいい場所にいるのもあり、頭を撫でてみた。
「………!」
「フフ、可愛い」
守一郎は撫でた頭を触り、赤面しながら少しふくれている。悪い事しちゃったかな?
「俺、子供っぽいですか?」
「ごめん、人懐っこい感じが大型犬みたいでつい撫でたくなっちゃった。もうしないから」
「いいえ、どんどん撫でて下さいッ!!」
「うわー、潔い……自尊心捨ててまで撫でられたいんすねぇ…」
お望み通りわしわしと撫でられる守一郎を見て作兵衛が呆れたように言う。
「作兵衛は撫でられたくないのか?」
「撫でられたくねえですね」
「へー、なんかもったいない性格」
「作兵衛も意地張ってないでさ、ほら」
私が作兵衛の頭に手を伸ばすと、撫でるより先に手首を掴まれ、引っ張られたので体勢を崩す。そして頭が下がった瞬間、ぶっきらぼうに頭を撫でられた。
「お、俺は!撫でられるより撫でたいんでッ!」
「そ、そっか…ごめんね?」
「あっ、ずるいぞ!!俺は撫でられたいし撫でたい!!」
こうして二人には髪がボサボサになるまで頭を撫でられた。
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時