其の参 ページ23
「なんだ、臼砲を引く者が揃わないのか?」
話が聞こえたようで、留三郎が荷車の前からやって来た。
「そうなんです。食満先輩とこの人数でやっとの重量を僕達だけで引くことは到底出来ないと思いまして」
「そうだな、久々知と下級生二人じゃ最初の登坂で既に登れないだろうな。守一郎、俺が抜けても平気か?」
「えっ?はい、恐らく大丈夫です!!」
留三郎は臼砲運搬に関して「二度とやらねえからな」と言っていたのに、自ら手伝いを買って出るなんて。さすが平太君に誤ってお父さんと呼ばせるだけあって面倒見がいいなあ。
「よし。それじゃあ俺も入るとして、あと一人くらい誰か──」
「フッ、その必要はないぞ留三郎!!」
文次郎君が腰に手を当てて留三郎と兵助の間に割って入った。口角が上がり、その顔は自信に満ち溢れている。
「そもそも鍛錬不足の留三郎に臼砲を引かせたのが失策なんだ。だからAが手が痛いのを言い出せずこんな怪我をした。
久々知、俺が一緒に引いてやる。留三郎は安心してその荷車を引くんだな!」
「何だとぉ!?運ぶ前からそんな大きな口叩いていいのか!?馬力不足で
私は荷台を降りると、文次郎君の鎖骨の下辺りを人差し指で何度か刺した。
「そうだよ!キューちゃん本ッ当に重いんだからね!それと、私の怪我は断じて留三郎のせいじゃないから撤回して!!」
「わ、分かった、分かったから突くのをやめろ!」
「潮江先輩、Aに代わる分としてあと一人ほど加えれば行きの用具委員会と同じくらいの馬力になりますがどうしますか?」
「そうだな…Aの代わりなら佐吉か団蔵だな。おーい、佐吉ー!お前も後ろから臼砲を押せ!」
「はっ、はい!」
こうして帰りの臼砲の荷車を引く面子が揃った頃、私達の横を図書委員会の皆が通りがかった。先頭を歩く長次さんはいつにも増して顔が怖いような……何があったんだろう?
「ねえ、雷蔵…」
「ん?どうしたの?」
私の呼び掛けに雷蔵ときり丸君が立ち止まってくれた。
「長次さん、何かあったの?とても怖い顔をしていたけど」
「違う違う、あれは
「あれがご機嫌の顔なの…!?」
「そ。眉を顰めて喜びを噛みしめているんだよ。中在家先輩は笑った時は逆に怒っている時だからね」
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時