其の参 ページ15
「ひゃ……んふっ……ちょっと、小平太……っ」
首筋にかけられる吐息がどんどん荒くなってくる。いよいよ擽ったくて我慢できずに身を捩り、両手で小平太の頭を掴んで引き剥がす。
「……ふう、満たされた!擽ったかったか!?嫌がってるのに悪かったな!」
そう溌剌に話す小平太だが、不自然なタイミングで小川にざぶざぶと入り、そのまま座り込んでしまった。小平太の腰から下は水に浸かってしまっている。
「え!?どうしたの突然!?」
「お前に手を出しそうになったから冷やしてる!!」
な、なんて正直な人……!!苦言を呈してやろうと思っていたけど、そんな気も失せてしまった。
「…ふふっ。馬鹿正直!」
「こら、馬鹿は余計だぞ!」
「そうだね、ごめん。あはははは!」
小平太には夜間護衛の夜からその性格に本当に支えられた。
豪快で細かいことを気にしないのに、人の機微に敏感でさりげなく人助けをし、自分の功を鼻にかけることもない。君のそういうところ、本当に格好いいと思うよ。
「はい!もう冷えたよね?」
未だ川の中で座っている小平太に手を差し伸べた。
「ああ、いい。包帯が濡れるぞ」
「構わないよ。ほら!」
躊躇いながらも私の手を取った。が、小平太が私の肩越しに何かを見つけて目を見開いた。
「あ!」
「ん?……うわっ!?」
いつの間にか背後に留三郎がいて、私の背中が当たってしまった。私のことには目もくれず、ただ腕組みをしてじっと小平太を見ている。
「小平太。お楽しみのところ悪いが、何か忘れていないか?」
「あー、あれだよな、逆茂木を運んでくるんだよな?すまんすまん、Aを見かけてすっかり頭から抜けてしまっていた!!なっははは!!」
あまり悪びれない小平太に鬼の形相になった留三郎。
「お前がいつまで経っても運んでこないから俺が戻るまであいつらを休憩にしたんだぞ!!」
「それなら下級生達に休憩の機会が与えられて良かったな!……冗談だって、すぐ持っていくから許せ!!」
じゃあまた後でな!とこちらへ手を振って走り去る小平太を見送ると、留三郎が溜息を吐いた。
「A、お前さっき小平太に何かされてただろう」
そんな前から見てたの?それなら早く声掛けてくれたらよかったのに…。いや、他人から見たら良い雰囲気に見えてしまったのかな?
「匂いを嗅がれてて」
「匂い?」
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時