哀車の術の段 ページ2
太陽が高くなってきた。
屋外に出ると乾いた土の道が白く反射して眩しくて仕方がない。日差しに灼きつくされそうだ。
お堂から少し下って比較的静かに過ごせそうな森の近くの民家へと案内した。忍たま達は最前線に総動員していて、どこの民家も使い放題だ。
「ここなんかどうですか？少し離れていて静かにお休みになれると思います」
利吉さんは戸を開けて中を覗き、満足そうに微笑んだ。
「うん、いいですね。案内どうもありがとう」
「良かったです！それでは、ごゆっくり──……？」
利吉さんが優しく腕を引いたので、敷居の中に踏み入れてしまった。
「久しぶりに会えた事ですし、お話できませんか？」
私も先日お忙しい中で北石先生を派遣された件についてお礼を伝えたいけど、見たところ利吉さんはお疲れのご様子。今は早くお休み頂きたい。
「いけません。私も積もるお話はありますが、きちんとお休み頂かなければなりません。またお話しする機会がきっとありますよ」
すると寂しそうな顔をした利吉さんが私の腕を離して言った。
「私は、Aさんに会えなくて寂しかったです。一刻も早くこの心の隙間を埋めたい……そういう思いもあって最速を保って園田村まで駆けました」
「……その心の隙間というのは、どうしたら埋まるのでしょう……？」
「無論、Aさんと共に過ごすことです」
だったら、私が話さなければ利吉さんは骨折り損のくたびれ儲けになってしまうということ？
「しかし、Aさんに嫌われたくはありませんから、諦めますね。引き留めてすみません…」
利吉さんは引き戸を閉めようと手を掛けたので、思わず一歩退いた。そしてカラカラと乾いた音を立てて私たちの間に隔てられた。
(ど、どうしよう……)
自分が非情な人間に思えてきた。
過大解釈かもしれないけれど、利吉さんは私と過ごすつもりでヘムヘムではなくご自身が制札を持って来たのではないだろうか。そうでなかったら恥ずかしいが……。
今、利吉さんが望んでいるものが肉体的な休息ではなく精神的安定だったら？私が夏休みに八左ヱ門に励まされたように、利吉さんも私と話して元気になるかもしれない。
それに、利吉さんは元々少しだけ話して後はお一人でお休みになるつもりだったのかもしれない。
今から声を掛けて既にお休みだったらそれこそ悪いし……どうしよう……！？
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます！鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました！連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます！ 素敵なお話をいつもありがとうございます！ 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです！ (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね！各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます！ (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月10日 16時
