其の参(伊作視点) ページ1
「あ、利吉さん!」
戸口で利吉さんが立っているのに乱太郎が気がついた。見たところ、少しお疲れのご様子。昨晩の喜三太救出から碌に休んでおられないのだろう。
「やあ。戦は終わったよ。今、投降した相手方の鉄砲隊を身包み剥がして村内に連れて来ているところ」
「利吉さんがかばいの制札を持って来て下さったんですよね、ありがとうございます」
鉢屋が立ち上がり礼をした。足を怪我した僕と頭を打った不破は座ったまま礼を言った。
「随分急いで来られたんですね。こんなにお疲れの利吉さんは見たことがありません」
「いやあ、父からタソガレドキの異常な布陣については聞いていたからね。学園長先生は制札をヘムヘムに持って行かせようとしたんだけど、私が走った方が早いかと思って。さすがに疲れたよ」
「どうぞ休んで行かれて下さい!」
「ありがとう。先生方にもそう言われた。ねえAさん」
「はっ、はい」
「保健委員に囲まれて取り込み中?良ければ休めそうなところへ案内して欲しいんですが」
「分かりました!」
Aちゃんは保健委員一人一人の顔を見て、それぞれの頭を撫でた。
「さっきのこと、もう気にしちゃダメだよ?気にしたら怒るからね!怒ったら怖いよ〜。照星さんとバチバチに論争したくらいだからね!」
まだ申し訳なさそうにする後輩達に優しく微笑むと、利吉さんの元へ駆け寄っていく。利吉さんはその端正な顔で破顔一笑してAさんを迎えると、二人で救護所を後にした。
「あれは案内だけじゃ済まないな」
鉢屋が腕組みをして溜め息混じりに呟いた。
「鉢屋先輩…でも利吉さんは今から休憩なさるんですよね?」
「案内役にわざわざ取り込んでそうなAを指名して、はいありがとうさようならって訳にはいかないと思うけど?私ならすぐ帰したりしない」
「ふ、二人きりで一体何を…!?」
「そりゃあ年頃の男女がする事といったら──」
「三郎!いくら何でもそんな訳ないだろ」
悪い顔した鉢屋が不破に圧力をかけられて口を噤んだ。しかし僕とAちゃんがいい感じだと思い込んでいる乱太郎が僕に詰め寄る。
「伊作先輩!止めなくていいんですか!?」
「戦の功労者に何もしていない僕が何も言えないよ〜…。大丈夫、先生方も近くにいるし、大胆な事はできないよ」
まるで自分に言い聞かせるように言った。
僕、今ちゃんと笑えているかな?
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時