【忍たま】君の想いは花筏【共通話４】 (ページ8)

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其の参（利吉視点）ページ8

その夜は妙な気配で目を覚ました。
早着替えで自前の忍装束に着替えて気配のする方へと向かう。

六年長屋の一室。既に勘付いていたのか、その隣室の立花と潮江が着の身着の儘で張っていた。二人がこちらに気がついたので私は人差し指を立てて口の前に持って来ると、二人は小さく頷いた。

Aさんの部屋の中から、荒い息遣いと水音が聞こえる。それだけだとAさんだって年頃の娘だし、自涜の可能性もある。
だが妙な感じがする。どう妙であるかは説明は出来ないが。

潮江が(どうします？)という顔をする。中を覗くことは出来ないが、確信に変わったらすぐ突入出来るよう張るしかない。(待機)と伝えた。

「ひやらッ！」

私達には嫌だ、と聞こえた。立花が開け放つとAさんはこちらを向いて横になり、その後ろから忍装束の男が、Aさんの口の中に自身の指を二本入れ、もう一方の手は袷の中に伸びていた。

「侵入者だッ！」

応援を呼ぶ為に叫ぶ文次郎に素早く手刀を入れ、突風のように脇を抜けていく。それを私と立花が追う。

侵入者が塀を越え、次いで私が越えたところで小松田君が現れた。立花が小松田君の餌食になり、出門票を書く数秒間の遅れを取った。

私は全速力で追ったものの、侵入者には逃走を許してしまったので足を緩めて立花を待った。

「立花君」

「利吉さん！」

「もう気配がない。戻ろう」

戻ると忍たまの高学年は全員起きていた。Aさんは四年生に背中をさすられていた。寝巻きの上から六年生の忍装束の上衣を肩に掛けている。食満のもののようだ。

「仙蔵！利吉さん！」

「すまない、撒かれてしまった」

「そうですか…利吉さんを撒くなんて相当な手練れなんでしょう」

(歳下のフォローが辛いな…)

鉢屋が進み出て訊ねる。

「A、お前がやって来た二日目の夜に出会した曲者か？」

「うん、そうだったよ」

「松千代先生が追って捕まらなかった奴だ」

「しかし妙だ。五年生から聞いた話によれば、奴の目的は未来人であるAを攫う事の筈だ。なのに何故そうしなかったのか」

立花は顎に手を添えて考え込む。

「連れ去りの途中ではなかったのか？」

食満が訊くと、立花はAさんの顔を見て言葉を濁す。

「ああ…まあ、何というか、な」

食満はじっとAを見た。

「A、奴に何をされた…！？」

まさか被害の内容を男集団の前で言う訳にもいかず、Aさんはしどろもどろになっている。