其の弍 ※微裏注意 ページ7
「……ねえ、モゾモゾ動くから君の臀部が私に当たっているのだけど。もしかして誘っている?」
曲者は初めから眠りこけてなどいなかった。
また口が手で覆われて話せなくなったので首をブンブンと振って否定する。
「ん?自分から誘ったと思われるのは恥ずかしい?だったら私から誘ってあげるよ」
大きな掌が容赦なく胸を鷲掴みにする。これはまずい。
一か八か、大きな声を出してみる事にする。私が忍の立場なら、叫ばれたら殺すより先に逃げ出すと思ったからだ。
「んん──ッ、むぐッ!?」
「静かにって言ったよね?」
口の中に長い指をぐっと二本入れられて、少しでも動けば舌の奥に触れてえづきそうになる。苦しさに涙を浮かべながら両手でその指を口から出そうと抵抗すると、半分くらい引き出してくれたものの、指先は口の中で水音を立てて動き回る。
「はあっ…はぁ」
静かな夜に私の荒い息遣いと、口内を蹂躙する水音しか聞こえない。
もう片方の手が袷をぐっと開いて寝巻きの中に侵入してきた。
「
今までで一番大きな声が出た瞬間、部屋の戸が勢いよく開け放たれた。
戸口には複数人立っていたが、月明かりの逆光で顔は見えない。
「侵入者だッ!!」
「おやおや、今からいい所なのに」
弾けるように離れて、戸口で待ち構える一人に素早く打撃を入れ、倒れたところでそれを退路として部屋から出て行った。それを二人がすかさず追ってゆく。
私は戸口へと走り寄る。倒れていたのは文次郎君だ。
「…うそ、文次郎君、文次郎君っ!!」
騒ぎが大きくなって、忍たま達がそれぞれ武器を手に集結した。六年生と五年生は曲者を追って行った。
倒れている文次郎君には伊作君が駆け寄って来た。
「伊作君!文次郎君が!!」
「落ち着いて。……うん、呼吸も脈拍も問題ない。文次郎は気を失っているだけだから大丈夫だよ」
「……そ、そっかぁ…」
「Aさん!!お怪我は!?」
浜君が背中をさすりながら聞いてくれる。
「袷が…、失礼します!」
三木は袷をぐっと引き合わせて乱れた寝巻きを整えてくれる。
「大丈夫…じゃないですね?」
「いや、私は大丈夫だよ」
「無理しないでいいよAちゃん。身体が震えてる」
伊作君に言われるまで気が付かなかった。確かに両手は小刻みに揺れていた。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時