夏休みの逗留先の段 ページ47
「吉野作造先生ー!」
「おや、Aさん」
翌日、私は幾分かすっきりした気持ちで久しぶりに吉野先生の元へとお手伝いに伺う。
「随分来れなくてすみません。お手伝いすることありますか?」
「山ほどあります…と言いたいところですが、今し方ヘムヘムがAさんの事を探していましたよ」
「ヘムヘムが?」
「見かけたら学園長先生の庵に来るよう伝えて欲しいとの事です。ついでに学園長先生宛ての文がつい先程届きましたので、渡して下さい」
渡された文には【忍術学園 大川平次渦正様】と書かれていた。私、ここで初めて学園長先生のお名前を知る。
「学園長先生、Aです」
「おお、入んなさい」
「吉野先生から学園長先生宛のお手紙を預かりました」
「来たか!」
学園長先生は手紙をふんふんと読むと、満足気に頷いた後、ヘムヘムに何かを告げてこちらへ向き直られた。
「忍術学園はもうすぐ夏休みに入る。教職員も含めて皆実家などに帰るのじゃが、その間お主をどこに逗留させるか思案しとってな、三つほど打診の文を出しとったのじゃが、全て色よい返事が貰えてのう。各所二週間ずつ逗留させようと思うのじゃ」
それはありがたい!夏休みの間、どこでどうやって生計を立てたらよいのか、私も薄々気にはなっていたのだ。
「その三つというのは…?」
「兵庫水軍、加藤村、佐武村じゃ!」
兵庫水軍は……以前食堂で食べたあの絶品蛸の唐揚げの蛸を忍術学園に卸してくれた海賊、だったかな?
「加藤村と佐武村はどういった所なのですか?」
「一年は組の加藤団蔵と佐武虎若の実家がある村じゃ。二人の親御さんも是非にと申しておるぞ」
「「学園長先生」」
そこで団蔵君と虎若君が庵にやって来た。学園長先生が呼びつけたようだ。
「あれ、Aさんもいらしてたんですか〜!」
「学園長先生、僕達に何の御用でしょう?」
「夏休みの間、Aを二週間ずつお主らの実家に滞在させようと思ってな。お父上の許可は得ておるがどうじゃな?」
二人は私の顔を見た後、顔を見合わせると「「Aさんが、うちに!?」」と声を合わせて驚いた。
「やっぱり、ご迷惑だよねぇ…?」
「いいえ!嬉しいですっ!!」
「二週間と言わず、ずっと居てください!!」
「あ、ありがとう…!!」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時