其の肆 ページ4
留三郎と伊作君の部屋は留守のようだったので、医務室に行ってみると、三年生の子が委員会当番で座っていた。
「あっ、Aさん!伊作先輩から聞きました。お変わりありませんか?」
「うん、この通り元気だよ!ええっと…五反田数馬君?」
「三反田です」
「そうだ、三だったごめんよ」
「いえ、大丈夫です」
間違われる事に慣れているのか、全く動じない数馬君。本当にごめんね。
「伊作先輩に御用ですか?」
「というか、保健委員会に。これ、さっき町で買って来たの。良かったら保健委員会の皆で食べて」
「これは?」
「有平糖だよ」
「わあ…!初めて見ました、ありがとうございます!!」
名前を間違えた失礼な私に対して満面の笑みを見せてくれた数馬君。可愛い!!本当にこの学園の下級生の可愛さったら異常ね!
心が満たされるのを感じながら医務室を後にする。
あとは用具委員会と会計委員会だけど…
四年ろ組の浜君と三木の部屋に行けば一度に終わるかもね?
「浜君〜、三木〜」
呼びかけると直ぐにガラ!と思い切り戸が開き、左腕に浜君、右腕に三木が抱き付いた。
「Aさんがああ!俺のお部屋にいい!!」
「いらっしゃいませぇぇ!!さあ!汚い所ですがどうぞどうぞ〜!!」
二人に両側から引っ張られて部屋の中へと入れられた。そしてキラキラの笑顔でこう訊くのだ。
「「それで!どちらにご用ですか!?」」
「両方にだよ。はい、どうぞ」
「こっこれは!?」
「まさかAさんから私への贈り物…!?」
「有平糖なんだけど、委員会の皆で食べてもらえたらと思って」
「潮江会計委員会委員長ではなく、この私にお預け下さるのですね…一度ならず二度までも!!」
二度…?ああ、会計監査が終わった後に会計帳簿を渡した時かな?両方とも文次郎君が不在だったからなんだけど…。
それは言わないでおこう…。
「ありがたく皆で頂戴致します!!」
「はあ〜…俺、独り占めしたいよぉ〜」
浜君はうっとりした顔で有平糖の包みをそっと抱き締めて身体を左右に揺らした。浜君の周りにお花が飛んでいるのが見えるようだよ。
「浜君は甘いもの好きなんだね。またお土産買ってくるね」
「そういう事じゃないですけどそれでいいですううう」
「Aさあああんまた来て下さいねえええ!ユリコ達もお待ちしております〜!!」
あれ、この二人っていつからこんな感じだったっけ…!?
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時