其の捌(三郎視点) ページ28
「んぐ、分かった、分かったから!ごめんって!」
「いや〜でかした三郎!これで我が委員会は来期も安泰だなぁ〜!団子でお祝いする?」
「勘右衛門は腹一杯団子食いたいだけだろ」
「三郎は誰を討ったんだい?」
迷い癖のために一つも風船を割れなかった雷蔵が訊く。
「木下先生と、山田先生と、乱太郎、きり丸、しんべヱだな」
「はぁ!?実技教科担当教師を二人も!?」
「ま、斜堂先生に扮して油断させたところをサクっとね」
「先生も騙されるって、お前の変装技術どうなってんの…」
「それより早い目に明日の夕餉の献立決めて食堂のおばちゃんに頼みに行かないとだろ、どうすんの?」
それな。俺は兵助の豆腐地獄さえ躱せればよかったから、別に何だっていいんだけど…
やや面倒に思っていると、少し前を歩くAと兵助を見つけた。
「よっ、お疲れ」
小走りで追いついて肩を組んだ。
「三郎!優勝おめでとう」
「ああ。明日の夕餉何食べたい?私思いつかないからお前に決めさせてやるよ」
ちらりと後ろを確認すると、八左ヱ門と勘右衛門が下唇を噛んで悔しそうにこちらを見ている。
はっはっは、これが勝者の特権だ!
「んー、それだったら兵助が豆腐食べたがっていたから豆腐料理にしようか」
「えっ、いいの!?A優しいなぁ!」
「優しいのは三郎だよ」
兵助が瞳を潤ませてAの手を両手で包む。私はその手を払い、両肩を掴んでぐるりとこちらに向き直らせた。
「っはあああお前何言ってんの!?豆腐以外に決まってんだろ!?私は兵助じゃなくお前が食べたい物を食べさせてやるって言ってんだ!それは断じて豆腐ではない筈だ!!そうに決まってる!!」
「そ、そうなの?」
「そうだよ!お前俺達が何の為に本気で鬼ごっこに挑んだと思って──ハッ」
兵助が悲しそうな目でこちらを見ている。
「三郎、そんなに豆腐が嫌いだったんだ…」
「いや…嫌いって言うか…(兵助から死ぬ程食わされてるから)兵助以外から供給される豆腐が最早受け付けないっていうか…」
「そ、それって…そんなに俺の作る豆腐を好きでいてくれたなんて…!
分かった!食堂のおばちゃんには俺の作った豆腐で料理してもらうよ!明日は最高級の大豆を使うから楽しみにしていて!」
「くっそおおおおおおおAこの野郎覚えとけよおおおお!!!」
こうして明日の夜は豆腐料理に、そして兵助が張り切って作り過ぎた豆腐を消費することが決定した。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時