其の参（留三郎視点） ページ23
俺は用具倉庫へ来ていた。
来る前に一年生を三人仕留めてきたが、未だ三点。それで首位が取れる訳ない。と言う事で身を潜められそうな用具倉庫へと来たのだが。
「…気配なし、か」
わざとらしくそう呟いて、用具倉庫の戸を閉めた。
「…行ったか」
「ぷはっ！苦しかったぁ！」
「大丈夫ですかAさん？のしかかってすみません」
「いえ、それより空気が薄くてどうにかなりそうでした〜」
俺が外へ出て戸を閉めたと思っているだろう。そう見せかけて内側から戸を閉めて天井に飛び上がったのだ。
まさか、狙っていたAと土井先生、それに利吉さんまでいるとは。
「この倉庫も少し危険ですね」
「用具倉庫だからね、武闘派の食満留三郎が委員長で管轄している倉庫だ。私達に気づかれないよう潜んで闇討ちなんて事もあるだろうし」
「ええ、例えば天井とかね」
二人の視線がこちらへ向けられた。
「…気付いていたんですか」
「うん、まあ」
「えーっ！？留三郎いたんだ！？」
Aだけは相当驚いた様子だ。
「気付いたところで、用具倉庫の出入り口はこの武道派用具委員長の私が塞いでますから、逃げられませんよ？」
鉄双節棍を取り出し、じりじりと間を詰める。すると利吉さんが進み出る。
「土井先生、Aさんをお願いしますね」
「護衛役は私なんだから言われなくとも」
「へえ、利吉さんは私に手を出せない事になっています。どうやって止めますか？」
「まあ、苦無で攻撃をいなすくらいならいいよね？」
「ホァアーッ！」
鉄双節棍を振り回して攻撃を加えてゆくが、それを悉く止め、終いには二本の棍棒を繋ぎ止める接続部に苦無の先端を差し込み、俺の動きを止めて見せた。
「やりますね！」
「おおー！利吉さん凄い！！」
「後ろががら空きですよ、土井先生！」
実は俺と共に伊作も倉庫内に入り、棚の後ろで潜んでいたのだ。伊作が持っていた湯呑みの中身を土井先生にぶちまけた。
「わっ！？柑橘の搾り汁？」
「まずいですよ土井先生！檸檬の搾り汁は風船割れます！」
「何だって！？うわっ！？」
土井先生の風船が時間差で割れる。
「中在家長次がこの風船の素材についての文献を見つけたんですよ。これなら簡単且つ安全に風船を割ることができる！」
「参ったよ、素晴らしい連携プレーだ。私に代わり、しっかりAを守ってやってくれ」
「お任せ下さい。さあAちゃん、僕と行こう」
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年8月13日 9時
