其の弍（半助視点） ページ22
ゆく先々で忍たま達に見つかり、ようやく倉庫の物陰に身を潜められ、暫しの休息を取れるようになった頃には私の息はすっかり上がっていた。
「すみません、私がお荷物になっているから…！」
「ふぅ…気にするな。最近運動不足だったので身体が鈍っているだけだよ」
「土井先生、今更なのですが、わざと風船を割られてはいかがですか？」
「何？」
「誰でもいいので割ってもらうんです。そうすれば校庭の本部に報告に行って、後は採点業務を再開できると思います」
「確かに！…いや、それは出来ない」
「どうしてですか？」
「私も一線は退いたとは言え一介の忍者だ。易々と負けるのは私の矜持に反する」
「なるほど…」
外から僅かに物音が聞こえた。
「しっ。静かに」
声量を落としてAに伝えると、Aも身を屈めて身じろぎを我慢した。
倉庫の戸が開いて、光が差す。
Aの身体をきゅっと自分の胸に引き寄せる。何たって今は頭に馬鹿みたいに風船を付けているのだから、ただでさえ見つかりやすいのだ。
「うわ、なんか不純なものを見てしまった気分…」
倉庫に入ってきた人物は我々の頭上で失礼な発言をする。
「…利吉くん、汚物を見るような目で見ないでくれる？」
利吉くんは教師と同じく攻撃を与えない立場の人間で一先ず安堵するが、私を見下ろす目が仲間とは思えない。
「大丈夫ですか？土井先生に何もされてませんか？」
「する訳ないでしょ！？」
「もちろんです。利吉さんもここに逃れて来たんですか？」
「ええ。忍たまが潜んでいないか確認していたら、まさかお二人がこんなに密着した状態で見つかるとは…」
「隠れるのにその必要があったからだよ。現にここまで小さくなったって君に見つかってしまっているし」
そこまで言って、私と利吉くんは話すのをやめて戸を見た。誰か近付いてきている。先程同様に身を潜めると、そこに利吉くんが加わって鮨詰め状態になった。
「ちょ、利吉くん!?三人は無理だよ!」
「仕方ないでしょう?ここしか身を隠せそうな所はありませんし。土井先生もっと詰めて下さい」
私が胡座をかいて、その脚の隙間にAの頭が下向きで収まり、Aの身体に覆い被さるようにして利吉くんが小さくなる。
この体勢はちょっとまずいって〜！！
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年8月13日 9時
