作兵衛の片想いの段 ページ17
京男というのはこれほどなのか…(何が)
しかし毎朝京で人気の髪結師に髪を結って貰えるなんて、不器用としては願ったり叶ったりである。
せめてものお詫びとお礼にもう起床すると言うタカ丸君の布団を畳んでから退室する。
この一日二日で色々な事があり過ぎて頭パンクしそう。そう言えば伊作君が私の事を【僕より不運】なんて言ってたけどその通りなんじゃ…?
「あ、作兵衛君!おはよう!」
「Aさん!おはようございます」
「あれ、一人?珍しいね?」
いつも迷子縄を持って左門君と三之助君を連れて歩いている作兵衛君だが、今は一人で顔を洗っていたようだ。
「俺が早くに目覚めちまったんで、一人で洗顔に来たんです。二人はまだ寝てますが、縄は軒先の柱に括り付けて来たんで多分大丈夫だと思います」
「そうなんだ、じゃあたまの一人時間だね!」
「そうなんです!気を遣わなくていいって最高です」
「あはは、いつもお疲れ様。一人時間に話しかけちゃってごめんね」
「いっいえ!……あの、良かったら俺ともう少し話してくれませんか?」
「うん、いいよ!二人が迷子にならないように、三年長屋の前で話す?」
「お気遣いありがとうございます!」
とは言ったものの、作兵衛君はさっきから黙っているだけだ。ここは歳上の私が話題を作るべきだな。
「「あの」」
あ〜。被っちゃった!
「うん?何?」
「あっ、えと、Aさんからどうぞ!」
「いいよいいよ、作兵衛君から話して」
「えと…それじゃあ…Aさんは、歳下の男ってどう思いますか…」
「どうって?」
「そ、その、恋愛対象になりますか?」
まさかの恋バナ!?作兵衛君そういう話題好きなんだ、意外だなー!
「歳下も恋愛対象だよ」
「そ、そうなんすね!それじゃあ、好みはどういう人ですか!?」
「うーん…頼り甲斐がある人かなー」
「頼り甲斐…」
「うん。作兵衛君は?やっぱり男の子は歳下好きが多いのかな?」
「お、俺!?俺は……今、歳上の人が気になる、かな」
「へえ、そうなんだ!好みは?」
「ええと…笑顔が、可愛い人…」
「うんうん、笑顔が素敵な人はいいよねえ」
それっきり作兵衛君は俯いて黙ってしまった。照れてるのかな?可愛いね!
「おーい、作兵衛君ー、黙っちゃってどしたのー?」
ほっぺをツンツンしていると、ぱしりと私の手を掴んだ。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時