フラグ回収の段 ページ16
間もなく、ドターン!!と猛烈な音を立てて廊下で転んだ。早朝なのもあり誰にも見られていなくてこれ幸い…
「大丈夫?」
…じゃなかった。
顔を上げると、タカ丸君が中腰でこちらへ手を差し伸べてくれていた。流石忍たま、転んでからまだ数秒しか経っていないのだけど。
タカ丸君は私の転ぶ音で目が覚めたばかりなのか、寝巻き姿で袷もいつもより開き気味で、鳩尾の辺りまで肌が露わになっていた。二倍の恥ずかしさ!
「う、煩くしてごめんね…」
手を取って起こしてもらった。
「そんな事はいいから。どこが痛む?結構な音だったからきっと怪我しているよね?」
「確かに手首は少し痛いけど、これくらい全然平気だよ」
私が右手首をさすりながら言うと、タカ丸君はその手を取って優しく患部を触った。
「これから熱を持ってくるかもしれないから、冷やさないとね。でもそれより先にやる事があるよね?」
「あ、そうだ髪を結いに部屋へ戻る途中だったんだ!」
「うん、じゃあ僕の部屋へおいで」
タカ丸君に優しく背中を押されて、有無を言わさず部屋へと通された。
部屋には先程まで寝ていたであろう敷布団と、飛び起きて飛ばされたと思われる掛け布団が戸口付近に落ちていた。
「起こしちゃってごめんね」
「構わないったら。それともお詫びに今から添い寝してくれる?」
まるで朝の挨拶を交わすかの如く顔色一つ変えずにサラッと言ってのけるタカ丸君、場慣れし過ぎじゃないですか!?
「冗談だよね!?」
「フフ、君になら本気にしてもらっても良かったんだけど」
ヒエエ!こんなん惚れてまうやろ!タカ丸君はくのたまちゃん達に人気があるって聞いていたけど、これは免疫ないと落ちるて!!
タカ丸君は挙動不審になる私を一瞥してまたフフと笑うと、姿見の前に私を座らせた。
「どんな事情があったか知らないけれど、この時代に髪を下ろしておくのはとってもはしたないんだよ」
「そ、そうなんだ…気をつけるね」
「前にも食堂で髪を乱していたけれど、これから僕以外の男に見せちゃダメだからね」
「う、うん…?」
「フフ、結ってあげるね」
あっという間に鋏で切り揃えてくれて、綺麗に結ってくれた。
「わー、ありがとう!」
「手首が治るまでは着替える前に毎朝僕の所へ来てね」
「もしかして手首を痛めたから結ってくれたの…?」
「それもあるけど、僕がしてあげたいんだ。いいでしょ?」
「う、うん、それじゃあお願いします」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時