其の参 ページ12
「あのなぁ!俺達だってAが居なくなったら死ぬ程嫌なんだから、そうならない為にもっと俺らを頼れっての!」
八左ヱ門が振り返って真剣な顔で言う。
「ちょっと怒ってる?」
「馬鹿、心配してんだ」
「俺も、Aさんとずっと一緒に居たいんで!絶対連れ去りなんてさせませんからね!!!」
「ふふ…さすが友達一号と二号。ありがとう!頼りにしてます!」
「エヘ…いざ言われると照れます…」
浜君にしては珍しく小声で、はにかんで持っていた布団に顔を埋めた。
「あぁっ!?守一郎お前どさくさに紛れてAの布団の匂い嗅いでるな!?」
「え?いやいや、そんな事は(スゥ──)」
「ずりっ!俺も(スゥ──)」
「ちょっと何してんのやめてよ汗臭いよ!?」
「君達。その人の匂いが一番出やすいのは枕だよ(スゥ──)」
私が持っていた筈の枕がない!?
「いつの間に…って言うか利吉さんまで何してんですか!!」
「はは、ごめんごめん」
二人は部屋の中まで運び込み、律儀にも敷いてくれた。
「…それじゃ、利吉さん。後よろしくお願いします」
「お二人とも、お休みなさい!」
「お休み」
「お休み、色々ありがとね」
二人が布団を敷いてくれたのは良いのだけど、利吉さんの布団との間が思ったより近い。
私はそそくさと布団を壁際近くまで引っ張って離した。
「えっ…私そんなに信頼ない?まさか枕の事?」
「いえ違います。私、寝相が悪いので万に一つも利吉さんにご迷惑をお掛けしない為です」
まあそれは半分嘘で、こんなスパダリ属性のイケメン忍者に就寝中の締まりのない顔を見られたくないからである。
何故って?恥ずかしいから。それにこの人私の素性の調査忍務中の可能性大だし…。めちゃくちゃ見られそう。
「何だそうだったんですか。布団からはみ出たら戻してあげますよ」
「あはは〜〜触れると踵落とし入るかもしれませんから結構です捨て置いて下さいませね」
ではではお休みなさい〜と利吉さんに背を向けて布団を被ると、ズリズリと引き摺る音が近付いて来る。利吉さんの布団である。
そうして距離感は振り出しに戻る。背後は利吉さん、前方は壁。
「ヒェ」
「敵が全速力で殺しに掛かってきて咄嗟に救えるギリギリの距離が一尺なんでね」
「そんなさっき逃げたばかりで舞い戻る事はないと思いますが」
「逃止の術も使いかねないからね」
もうずっと壁向いて寝よう。寝返りなんて打つものか!!
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時