ナック 手首:欲望 貴方は美しい ページ10
今夜もやっぱり、眠るのが怖い。
深夜2時は人でないものが出ると言いますが、
私は見たことがありません。
人でないものは出ませんが、
人で無しは大勢訪れます。
けれど、今夜訪れたのは
思いもよらなく主様でした。
「いつもこんな時間まで起きてるの?」
ナック「はい、ですが、もとより私は
眠ることが好きではないのです。
だから、少ない睡眠でいいんですよ。」
主様はうーんと考えこまれました。
いくら初夏といえど、夜は冷えますね。
主様は薄着でいます。
大丈夫でしょうか。
ナック「主様、私のものでよければ
上着をお羽織りください。
体を冷やしてはいけません。」
「ありがとう」
主様は襟を掴んで口元に寄せました。
「ふふ、ナックの匂いがする」
ナック「私の匂い?」
ラトさんがいつか言ったことを思い出しました。
ラト『猟奇的で…抑えが効かない…
血に飢えた獣のにおい…』
ナック「それはどういう…?」
主様も、私の本性に気づいているのでしょうか。
夜は私の不安を増幅させる…。
少しの間があって、
貴方は不安そうにする私に
夜の太陽のような微笑みを向けました。
「ああ、ごめんね。
安心する匂いってこと。」
ナック「主様」
私は、思わず跪きました。
満月すら、貴方の後光になるための
演出に思えます。
「え、ナック?
ごめん、なんも考えずに言ったから」
ナック「いいえ、私は今、主様に救われました。」
主様の手を取ります。
甲に唇を落とそうかと思いましたが、
手首へと、場所を変えました。
「ナック、なん、で」
尊敬や敬愛はもちろんのことですが、
私は、美しい貴方が欲しい。
私を救ってくれた、貴方の全てが____
ナック「主様、貴方は美しくない私も
受け入れてくれますか」
縋るように、またキスをする。
醜い欲望が出て、ぢゅっと吸い付き、
跡を残してしまった。
貴方を見上げる。
主様は私に腕を広げ
「いいよ。ほら、おいで。」
初夏の夜は冷えますが、
主様の腕の中は暖かい。
「ね、ナックはいつも寝てないんでしょ。
眠るまでついていてあげるから。
ほら、温かいでしょ」
主様の胸に埋まると、
鼓動が伝わってくることが何より嬉しい。
あまりに安心して、
私はすぐに眠りに落ちてしまった。
次の朝、
寝起きの私が主様を離そうとしなかったせいで、
朝は大変なことになったそうです。
ラト 首筋:執着 私だけの主様→←ルカス 耳:誘惑 鍵のかかる夜
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悒ゆう(プロフ) - もる。さん» ご愛読ありがとうございました(*´ω`*)他の作品も是非どうぞ! (2022年6月5日 9時) (レス) id: f72a01e073 (このIDを非表示/違反報告)
もる。(プロフ) - 完結おめでとうございます!陰ながら応援させていただいておりました!とても面白い作品、ありがとうございました〜(*´꒳`*) (2022年6月5日 9時) (レス) @page14 id: f898b9995a (このIDを非表示/違反報告)
悒ゆう(プロフ) - Lilyさん» ありがとうございます!頑張って書きますね(°▽°) (2022年5月29日 18時) (レス) @page9 id: f72a01e073 (このIDを非表示/違反報告)
Lily - あなたの文章、とても好きです。 (2022年5月28日 12時) (レス) @page8 id: d4500c81a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悒ゆう | 作成日時:2022年5月15日 19時