フェネス こめかみ:慰め 俺にできること ページ5
夜の書庫がとても落ち着くのは
月光がバルコニーから差してくるせいもある。
ふとドアが開き中に人が入ってきて、
誰だろう、と顔を出そうとしたら
「…」
薄暗い中でも、主様の潤んだ瞳は
よくわかったし、
なにより涙の跡が月光に
照らされていたせいもあった。
どうしようか、
俺にいいアドバイスなんてできっこないし、
ハウレスのように頼りにはなれない。
けれど、今のあなたを
慰めるくらいなら、俺もしていいのかな。
フェ「主様、」
「ッ、フェネス」
死角から現れた俺に驚いた様子で、
警戒している。
目元を隠しているから、
本当に泣いていたんだろうな。
フェ「あの、もしよろしければ、
俺に何があったか話してもらえませんか」
「ただ、少し疲れただけだよ」
フェ「そう、ですか」
話しにくいこともあるんだろうな。
引き下がろうか、
ひとりにしたほうが、楽なのかもしれない。
フェ「いいえ、」
やっぱり、放っておけません。
フェ「主様、俺の胸でよければ貸しますよ、
来てください。ね」
悟すように語りかけると、
堪えられず、主様は俺の胸に飛び込んできた。
主様の小さい体躯では、
俺の鎖骨あたりにつむじがきて、
庇護欲が湧く。
フェ「大丈夫です、俺がいますよ」
頭を撫で、背中をさすって、
できる限り安心してもらえるように。
こめかみにキスをして、
大丈夫、大丈夫と囁き続ける。
しばらくの間、主様はすすり泣いていたけれど、
いつか顔を上げて、
「フェネス、ありがと」
と、泣き腫らす目で笑って見せた。
フェ「あ、そうだ、目が腫れてしまいます。
何か冷やすものを…」
体を離そうとした。
すると、
「待って」
引き止められる。
懇願するような目が何をいうか、
俺にはよくわかった。
(もう少しそばにいて)、と聞こえた。
フェ「主様が、おっしゃるのなら。」
俺は他の執事が入ってこれないように
書庫の鍵を閉め、
本棚に凭れ腰掛けると、
フェ「主様、ここに」
主様は俺の膝に跨った。
もしかしたら、主様はこの体勢が
男を興奮させるものかもしれないことを
わかっていないのかもしれない。
でも、まだその時じゃない。
主様はこんな俺を選んでくれた。
また、こめかみにキスを落とす。
いつか、唇になんて。
俺はまだ慰めることしかできないけれど、
願うくらいなら、許してくれますよね、
主様。
ボスキ 髪:思慕 長髪の帷に→←ハウレス 瞼:憧憬 同じ景色を
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悒ゆう(プロフ) - もる。さん» ご愛読ありがとうございました(*´ω`*)他の作品も是非どうぞ！ (2022年6月5日 9時) (
レス) id: f72a01e073 (このIDを非表示/違反報告)
もる。(プロフ) - 完結おめでとうございます！陰ながら応援させていただいておりました！とても面白い作品、ありがとうございました〜(*´꒳`*) (2022年6月5日 9時) (レス) @page14 id: f898b9995a (このIDを非表示/違反報告)
悒ゆう(プロフ) - Lilyさん» ありがとうございます！頑張って書きますね(°▽°) (2022年5月29日 18時) (レス) @page9 id: f72a01e073 (このIDを非表示/違反報告)
Lily - あなたの文章、とても好きです。 (2022年5月28日 12時) (レス) @page8 id: d4500c81a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悒ゆう | 作成日時：2022年5月15日 19時
