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「退院おめでとうございます」
あの告白のあと幾日か経ってAは退院することにした。
支えがあれば歩けるがまだ車いすは必要で、定期的にリハビリにはいかないといけない。
ただそれでも一緒にいたいと言ってくれたから、退院を決意した。
コナン君はAが警察学校の同期だと説明していたからよかったものの、梓さんやほかの方にはどう説明しようか迷ったが、適当な理由を付けて報告をしておいた。
そして今日はあいつらの墓参りに来ている。
入院してから来れていなかった分、長い間手を合わせている。
「ごめん。待たせちゃって」
「大丈夫。これからどこか行くか？」
「そうだなぁ。…海行きたいかも」
「海？」
どうしてと聞くと秘密と年に似合わない綺麗というより可愛い笑顔で返されたのでそれ以上は聞かなかった。
海まで行くのに時間がかかったため退院してからの疲れもあり寝てしまった。
「Aついたぞ」
「ん？あぁ…」
寝起きのAを車いすに座らせ海まで行く。
予想以上に時間がかかってしまったため日も傾いていた。
蒼いはずの海が、鮮やかなオレンジに染まっていた。
「零。ありがとう」
「なんだ？いきなり」
「退院してから今までよりしっかり見ててくれてたんだなと思って」
こういうことを素直に言うからAはずるい。
夕陽に照らされた彼女の顔に涙がつたう。
「ずっとそばにいてくれたのに、気づけなかったなって」
「…」
「これからも迷惑かけるけど」
「別に迷惑なんて僕は思わない。これからじゃなくて今が幸せなら、いまAがここにいればそれで僕は十分だ」
「零…」
「A。これからもずっと愛してる」
そういってキスを落とす。
ようやく、前に進めたよ。
これからも見守っててくれな。
『よかったな、ゼロ。ちゃんと幸せになれよ』
あいつらの声がした。
でも振り返ることはしなかった。
友情も
愛しさも
別れも
思い出に変わろうと誰かが忘れようと俺はずっと忘れない。
残してくれたものを、愛している人を、
今度は守り続けるために。
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作者名：うまずたゆまず | 作成日時：2018年8月17日 20時
