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「こちらの勝手でわざわざ残ってもらうことになってしまって本当にすみませんでした」
「構わないですよ。…何もなかったですか?」
「昔のこと少し思い出した以外は大丈夫そうでした」
「そうでしたか」
そういって安堵の表情を浮かべる彼女の主治医。
まだ精神面で不安が残る患者を外に出さすのは例外的なことだろうし
正直なところあまりいいことではなかったかもしれない。
ただ病院関係者ではない自分から言わせてもらえば
あんな無機質な病室で閉じ込められるよりはよっぽどいいのではないか。
何も知らない立場の人間はそういうことをずけずけと言ってくる。
それが自分にとってどれだけ重いものだとはいやというほど知っていたから
あえて口には出さなかった。
「七草さんお休みになられました」
「あぁ。では今日はこのくらいで」
「本当にありがとうございました」
入院した直後は夜も寝ていなかったことが多かった。
ただ最近は眠りも深くなったと何回か前に来た時に言っていた。
急激に治るものでは決してないけれど一刻も早く治ればいいと思う。
そしたらもう一度やり直せるんじゃないか、
伝えられなかったものが伝えられるんじゃないか
そんな淡い期待を寄せていた。
ただ許されたいわけではない。
許されないくても一緒にいたい。
…そんなことが自分にできるんだろうか。
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作者名:うまずたゆまず | 作成日時:2018年8月17日 20時