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赤、青、黄、緑。
様々な色を持った火薬が空に上がっては、
それぞれの形をもって、観客の思いを乗せては消えてく。
あぁまるで自分のようじゃないか。
情けなくて情けなくて花火の音と相まって泣けてくる。
「綺麗だねぇ透君」
「そうだなA」
そういった彼女の顔なんて見れなくて。
だけど1人だったらこんな感情すら持てなかっただろう。
今日だけ。
今日一日だけ。
一日と言わずこの一瞬だけでも。
「A。いいか?」
「…いいよ。零」
そういって彼女の手をこれほどかというほど握る。
あいつらのように消えてしまわないように
どこかに行ってしまわないように
存在を確かめ合いながら見ていたい。
「ねえ零」
「なんだ」
「みんなも一緒に…見てるかな」
「きっと…きっと見てるさ」
今ここにいなくても
自分がこの目に忘れてしまわないよう焼き付けているから
だから
だから
「大丈夫だ」
「…そうだね」
世界のだれだろうと知ったことではない
今この瞬間
自分が彼女の隣にいる
その事実だけでいいんだ。
『なあ
『なんだ景光』
『もしさ…』
『なんだよ』
『んーやっぱなんでもねえわ』
『はあ…』
なあ景光。
お前が言いたかったこと
俺はちゃんと汲み取れたんだろうか。
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作者名:うまずたゆまず | 作成日時:2018年8月17日 20時