名もなき精神病とその方程式【降谷零】 (ページ11)

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「そろそろ帰ろうか。A」

「あーそうだね」

病院の外出可能時間はそう長くない。

ましてや精神面でまだ不安がある彼女は特に。

ポアロで飲食したお金は自分が払っておいた

毛利さんたちに挨拶をして遅れて店を出てくる彼女

「今日は楽しかったか」

「…そうだね。少し疲れたけど」

「そうか」

「でもやっぱり、安室透には慣れないかな」

「…」

「愛想笑い振りまいてるのは零らしくないなって。…まあ仕方ないことなんだろうけど」

自分らしくない…か

決して安室透でいる期間は短くはなかった。

違和感ないように演じていたし、ポアロで料理を作ることができるのは正直楽しかった

でもその期間よりも長くいた彼女にとっては違和感の塊なんだろう

仕方のないことで片づけた彼女の真意を全部読み取ることなんてできるわけがない

「やっぱり零のこと知ってる人がいるとやりにくいよね」

「え？」

「こんな体だしさ、気にかけなきゃいけないし」

今日はごめん。

謝ることなんてないのに

具体的にどこか行かないかと提案できなかった自分が悪いのに

ただ彼女の言葉を受け入れるしかない

そんな自分をあいつらは許すだろうか。

「今日いけなかった分明日はリハビリ頑張らないとな」

「…別に」

「ん？」

「別に焦らなくていいと思うぞ」

「でも」

「少しづつできるようになればそれでいい」

本心を少し出した独白。

ただの綺麗ごとだと思ったがそれでも言いたかった

もう二度と手に戻ってこない

そんな気がしたから。

「…そうだね」

ありがとう。

やっぱり笑顔が似合うな

そんなことが言えたらもっとよかったか。

…前に進めただろうか。

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