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193話 ページ44

「ごっ、ごめんなさい!!」



深く頭を下げて言うその姿に、Aは目を丸くする。



「…今日、この目で見るまで信じてなかったんです…お2人が、付き合ってること」

『………』

「でも、後ろから見てて…本当に、好き同士何だな、って、分かって」

『…田中君…』

「申し訳なくなって、どうしても、直接謝りたくなって…抜け出してきました」



その姿は心から反省しているように見えた。

でも、あのプレハブ小屋の一件を思い出すと、信じるのに躊躇してしまう。



『…えっと…ごめん、その…今までのもあるから、すぐには受け入れられないんだけど…』

「は、はい」

『…きちんと謝ってくれたのは事実だから…それは受けとっておくね』



ベンチから立ち上がり、しっかりと田中に向き合い、Aは言った。



「…ありがとうございます…!」



もう一度頭を深々と下げると、田中はハッと顔を上げた。



「そ、そういえば、志村先輩は!?」

『え?ああ、今はトイレに…』



そう言いかけたところで、慌ただしい足音が近づいてくる。



「…っ、Aちゃん!!」

『あっ、噂をすれば…って、ちょ!?』



走りにくいであろう浴衣で2人に駆け寄って来た新八は、その勢いのままAを抱きしめる。



『えっ、いやあの…』

「っ、ハァ…ハァ……ごめん、一人に、して…」



ギュッとAを抱きしめ、息を整えながら呟く。

そして、Aを自分の方へ抱き寄せながら、田中に向き直る。



「…高杉さん達の所に、帰って」

「…っ!」



抱きしめられた衝撃で新八の顔は見れなかったが、声色だけで怒りがひしひしと伝わってくる。



「…す、すみません…もう、用は済んだので…か、帰ります……!!」

「用って何を……ってコラ!!」



新八の気迫に押されたのか、田中は慌てて帰っていった。
それじゃ気が済まないと、新八は後を追おうとする。



『ちょっ、新八!!もういいよ!!』

「でも…」

『…ちゃんと、解決したから』



走っていく田中の背中を、Aは穏やかな表情で見送っていた。

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作者名:ウミガメ | 作成日時:2021年7月23日 18時

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