191話 ページ42
「ふぅ…」
用を足して手を洗い、新八はトイレを出た。
ここのトイレ会場から離れてるけど、やっぱり空いてるなぁ、と歩きながら考える。
…この後は、取って置きの場所で、花火を見て、それで…Aちゃんに…
そこまで考えていた時だった。
「…ん?」
腰に下げていた巾着から、LIMEの着信音が流れる。
画面を見ると、相手は高杉だった。
「…はい、もしもし?」
【志村!お前今どこだ!?】
「え?トイレを出た所ですけど…」
【田中が逃げやがった!!】
食いぎみに被せてきた高杉の言葉に、サーッと凍り付く。
【…最初は大人しかったが、さっき俺らの隙をついて逃げやがった…
今屋台の辺手分けして探してるが、まだ見つかってねェ…!!】
「っ!!」
【Aは?無事_】
高杉が言い終わる前に、新八は駆け出した。
しまった、油断していた。
浮かれて、こんな大事なことを忘れるなんて…!!
そんな事を頭の中に駆け巡らせながら、新八は走った。
その頃、りんご飴を食べ終わったAは、スマホをいじりながら、暇をもて余していた。
『この後、どこ行くのかなぁ…』
屋台の向こうの、花火を見るエリアとは、反対側だけどなぁ…とぼんやり考える。
花火目当てか、人通りはほとんど無かった。
そんな中、遠くから足音が近づいて来たのに気づいた。
一瞬、新八かと思ったが、新八は浴衣。
足音は下駄ではなかった。
すぐそこまでやって来た足音に、Aは顔を向けた。
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作者名:ウミガメ | 作成日時:2021年7月23日 18時