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名前を呼んで ページ3

目を覚ましたのは昼御飯時。瞼を開けると、片手で本を読む少女、Aが居た。

まだ煉獄に気が付く様子も無く、黙々と読書をしている。一頁、また一頁と流れるように視線が上から下へと移り変わる。


ふと、紙をを滑らせる手を止めた。


「…あら、おはようございます。随分と寝ていらしたようで」

「あぁ、おはよう…いや、こんにちは か?」

「そうですね、今の時間帯だと こんにちは です」


暫く寝顔を見られていたと悟った煉獄は照れ臭そうに笑った。Aもそんな煉獄を見て本を閉じる。本の内容はどうやら医学書のようだった。

「その本は医学書か?」

「はい。西洋の医学を纏めたものです。胡蝶が手に入れてくれたんですよ」

本の表紙を人差し指でなぞりながら答えてくれた。装丁がしっかりなされているから、きっとそこそこの値段はするのだろう。

「水瀬少女は勉強熱心なんだな。良い事だ。」

「一応これでも医者の端くれですから。それに、水瀬 で良いですよ。少女まで付けると長いでしょう?」

「よもや!それではAと呼ぼう」

その言葉にAは謙遜する。

「別に…構わないですけれども…。私なんかの名前を炎柱様が呼んでくださるなんて光栄過ぎて」

「炎柱じゃなくて良い。煉獄杏寿郎だ。名前で呼んでくれ」


それこそ呼べません と顔の前で手を振った。意味がわからないような顔をする煉獄に向けて困り顔をする。

「私は貴方様と違い、ただのしがない鬼殺隊の医師で御座います。最高位の柱の方と同等の立ち位置で呼び合う事なんて到底許されません。私が許しても、他の者が妬みます」

だから、どうか炎柱様と呼ばせて下さい。と懇願する。

もし、自分がその立場だったらどうだろう。平々凡々な隊士が柱と互いに名前で呼び合っているだなんて、まず関係性を疑う筈だ。
そして次に、きっと恨み妬みから何か嫌がらせや陰口を言ってしまうかもしれない。人間は他人を羨む事しか出来ない、醜い生き物なんだから。

「…そうか。無理にとは言わないが、いつか俺の名前も呼んで欲しい」

「考えておきますね」

しゅん、と耳が垂れた仔犬のように項垂れる煉獄。Aは窓の外を見ていたのでその表情に気付いていなかった。



ーー
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橘欅(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!幸せな気持ちになっていただけるなんて…光栄です!どうかこの作品をご贔屓に! (2019年11月13日 16時) (レス) id: 4f6b87549d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 主人公が可愛らしくて好きです!煉獄さんとのやり取りが微笑ましくて読んでる側もすごく幸せな気持ちになります! (2019年11月12日 16時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:橘欅 | 作成日時:2019年11月10日 22時

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