女の幸せとは如何に ページ15
結婚 というものは、誰もが憧れる女の幸せなのかもしれない。しかし、それはAには例外のようだった。
海外にかぶれたAの婚約者が燕尾服を着たい、と喚いたので白無垢では無くウェディングドレスを着る羽目になってしまった。
あんな体型で果たして服が入るのだろうか。袴の方がまだ足の太さを隠せるというのに。
女中に髪を結ってもらい、化粧も施してもらう。“お似合いです‼”とか“とっても素敵だわ…”とか、うっとりとした溜め息を吐かれたところで嬉しくもない。
Aの心はうわの空だった。
何もかもがどうでも良かった。妹に、逃げて良い と言われても、何処に逃げれば良いのかわからない。地の果てまで追いかけられるに決まってる。自分一人の幸せより、妹と母の幸せが先決なんだ。
妹の親切心を蔑ろにしてしまった罪悪感にちくりと胸が痛むが、どうしようもなかった。
白いヒールが履き慣れなくて裸足のまま足を遊ばせている。本当に、このままで良いのだろうか。全くわからない。
「姉さん、本当に…いいの?」
社交会のような綺麗な召し物を着た妹がおずおずと部屋の中に入る。Aはにこりと笑った。
「良いの。これで家の役に立てるのなら万々歳じゃない‼…あいつの事は、思い出として胸に残ってるから大丈夫。色褪せたとしても絶対に消えない。初恋は、淡く儚い方が素敵じゃない?」
レースのの手袋が、蛍火の頭を撫でた。妹は、拳を握り締める。
ずっと家を守って来た姉に、幸せになって欲しかった。心から愛する者に寄り添う姿を見たかった。強がらない姉が…見たかった。
何か言い掛けようとした刹那、式の支配人からの声が聞こえて来た。もう、式が執り行われるらしい。
Aは名残惜しそうにその場を離れた。
新郎と合流する為に、待合室に向かう。ヒールの音が嫌に響いて顔をしかめた。
髪がこってこてに固められ、服のボタンがはち切れんばかりだ。きりきりと音が聞こえるくらい。
新郎は、Aの姿を見て言った。
「馬子にも衣装…だな。纏ってる衣装に負けてるな。それに比べて僕はなんて美しい事だろう。貴婦人方だって…」
うだうだと自分の容姿を褒め称えているので途中から書くことをやめた。母も式を挙げるときはこんな感じだったのだろうか。
“新郎新婦の登場です”
地獄のアナウンスにAは目を伏せた。開いた扉の先に何が待っているのか彼女にはわかる。死ぬまで終わらない 苦 と。
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橘欅(プロフ) - 柚葉さん» 此方こそ読んでいただき感無量です!拙い文章ですが私なりに煉獄さんのかっこよさを出したつもりの作品でした!本当にありがとうございます! (2021年4月16日 22時) (レス) id: 008152d6a1 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - やっぱり煉獄さんはカッコいい!!素敵な作品を読ませていただきました!ありがとうございました!!! (2021年4月15日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - コメント失礼します。私名前がメイなんですよ。それで名前ひらがなで読んでったらめいめいメイになりました!面白すぎません笑? (2020年3月18日 22時) (レス) id: f101cde2b9 (このIDを非表示/違反報告)
橘欅(プロフ) - あおさん» ありがとうございます!最近寒いですね〜、私の地方にも白鳥が訪れて来ました。最後まで御愛読ありがとうございました!次回作も是非目を通して下さいね! (2019年11月12日 22時) (レス) id: 4f6b87549d (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - 橘欅さん» 楽しみに待っていますね!無理はなさらずに、最近は寒いので体を冷やさないようにしてくださいね〜 (2019年11月11日 2時) (レス) id: 03cb9b6635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘欅 | 作成日時:2019年10月27日 1時