365日 (ページ19)

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夢と静寂と鼓動③ ページ19

どのくらいの時間が経ったかはわからないが
少しずつ彼の心臓の鼓動が戻り始めた頃
外で子供の笑い声が聞こえた。

彼はゆっくりと目をあけると
私の顔を見て、頬を優しくなでる。

「何て顔してんだ。」

『えっ…？』

どんなひどい顔をしていたのだろう。
系さんは、私の前髪をそっと横によけると
おでこにキスをした。

再び私をきつく抱きしめると
ふーっと、大きく息を吐く。

「A」

『はい。』

「お前がいなくなる夢を見た。」

てっきり有希子さんの夢を見ていたと思っていたので
驚き、系さんを見上げると、系さんはクソっと呟いた。

我ながら現金だが、胸に暖かい気持ちが込み上げ
思わず頬が緩む。

『系さん。』

名前を呼ぶと、ん？なんだ、と優しい口調でこちらを見る。

私は、そっと系さんの頬にキスをした。
不意をつかれたのか、系さんは目を丸くしている。

『私はずっと、そばにいます。』

目を見てはっきり言うと、系さんは優しく微笑み
私の後頭部に手を添えると、唇を合わせる。

唇を離すと、また強く抱きしめあった。
お互いがお互いの存在を確かめるように。

彼のにおいと暖かな体温と緩やかな鼓動が
私を安心させる。
彼にも、私のそれが伝わっているのだろうか。

起きたら、いつもより丁寧にコーヒーを淹れよう。
昨日お店で焼いた、パウンドケーキと一緒に。

すっかり目が覚めてしまったと思っていたのに
いつの間にかまた、光の中に吸い込まれて行く。

今度は、彼がうなされる事がない事を願いながら。