365日 (ページ30)

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今年は、例年よりも早く梅雨が明けたと思ったら
途端に酷暑が訪れ、一歩外に出ると
熱風が全身を覆い、少し歩いただけでも
汗が噴き出すような夏だった。

大学の夏休み中、UDIラボに毎回朝から出勤していたが
最後にと、今日は神倉所長がお休みを下さった。
お店もないので、久しぶりに1日何もない日だ。

午前中に家事を済ませ、夜の準備も終えると
遅いお昼がてら家を出た。
随分和らんだが、まだまだ暑さを感じる気候だ。

信号待ちの間に、手で日差しを遮りながら空を見上げると
夏らしい青い空と、立体的な雲。

途中、パン屋さんに寄ってサンドイッチを買い
今日は高台の方ではなく、海の方へと足を運ぶ。

目的の公園にたどり着くと、海に向かって並ぶ
ベンチのひとつに座った。
ちょうど木陰になっていて涼しい。
平日だからか、人もまばらだ。

水筒のお茶を飲み、ふうと一息つく。
滑るように飛ぶカモメと、埠頭に停泊するコンテナ船
ひとつひとつコンテナを積み上げていくガントリークレーン
ゆっくりと回転する風力発電と、湾を横断する大きな橋。

水平線は見えないが、好きなものばかりのこの風景の中で
気持ちの良い風が頬を撫で、思わず目を閉じた。

カモメの行方を目で追いながら、サンドイッチを食べ
たまに横切る船の動きに合わせて
何も考えず目線を動かす。

そんな風に、しばらくぼーっとしていると
ふいにスマートフォンが振動した。

ディスプレイを見ると
お仕事中のはずの愛しい人の名前。

解剖がひと段落したのだろうか。
それにしても、お仕事中の電話は珍しい。
何かあったのだろうかと、不安が頭をもたげる。

『もしもし、系さん？』

「今どこだ。」

『家から少し歩いた所にある
あの埠頭の見える公園です。』

「ひとりか？」

『はい。』

「今から行く。」

『えっ？系さん、お仕事は？』

「神倉さんに帰れと言われた。
そこにいろ。」

早々に電話が切れると、心臓の鼓動を抑えるために
空を仰ぎ、大きく息を吐いた。

スマートフォンを胸の位置で両手で握っていると
ドクドクと心臓の動きが手に伝わってくる。